第八十二舞『危惧される威力』 ページ32
_
太宰は、壁に背を
「このピアスは、私が預かっておくよ」
そうして、アイザックの肩にぽんと手を置く。
びくっ、とアイザックは肩を震わせた。
「全く。簡単に自分の身を投げるものだね。三ヶ月前、君を取り戻すのに苦労した事も知らないでさ」
簡単に身を投げる、とは太宰に云われたくは無いのだが…それとこれとは話がまた違うのだろう。
「わる、かった…でも、異能兵器を止めるには」
「でもじゃない。君さぁ…そうか。私の事も忘れて居るのだね」
アイザックの冊には、太宰の事は『友達』、ムカつけば殴って
善いと書いてある程度だった。
何時と違う…少し弱々しいアイザックを、太宰はこれ以上責める気にもなれなかった。
「策はあるよ。私にも…まぁこれくらいはあるかな」
と、太宰は五本指を立ててアイザックに見せた。
「五個…?」
「五十個だよ」
太宰が微笑むと、アイザックの精神を拘束する何かが解けた。
ずるずるとアイザックは背の壁を伝って、へたりと尻もちを着いた。
「私は、君の異能力の主だ。これでも…関係無いなんて事を、
もう一度云えるかい?」
「……ち、」
アイザックは太宰を見上げ、悔しそうに睨み付けて舌打ちを
した。心底記憶を失う前の自分を恨んだ。
「あ、こら。ご主人様に舌打ちしちゃ駄目でしょ?番犬君」
巫山戯て云う太宰に更に苛立ち、近くに落ちていたティッシュの箱を投げ付けた。
「一寸痛い!地味に角が当たった!」
「ざまぁみろ、海藻野郎。あと家出る時に鍵掛け忘れんな阿呆」
アイザックがまだ何か投げて来そうな気配がするので、太宰は枕を盾にし始めた。
「来るなら来給え、ミニゴリラ君!あと短気は禿げるよ!」
大宰の言葉を聞いたアイザックは、ダン!と畳の床を叩いた。
畳はミシィッと可哀想な音を立て、アイザックの拳の跡が残って居た。
今度は、太宰が少し冷や汗を流していた。
「ミニゴリラ…?それは、完っ全に売り言葉だよな…?」
中原に体術を教わった面もあるのか、物に当たった時の物の損害具合が激しいのは、中原譲りである。
最も、中原が当たればこれ位では済まないが。
「アイザ君…?そんなに?そんなに怒った?」
「勝手に川に飛び込みやがって…事の発端はあんた
だろうが!!」
_
要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
428人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ