死ぬより先に、どうか殺して呉れ。双【文豪ストレイドッグス】

第七十九舞『不器用な丁壮』 ページ29

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ドストエフスキーと離れた後。彼は今日中に自国に帰るらしい。



次いでに探偵社に頼まれて居た、一寸した調査をした後に家に帰ると…、明かりは点いて居なかった。




鍵は無くしたら怖いから、太宰に預けた。その太宰も冷たい川に溺れて、帰って来ないのではと思った。





別にその辺で寝ても善いのだが、ドストエフスキーから貰ったこのピアス。



見るからに高そうだ。これが盗まれれば溜まったものでは無い。






「…探偵社に行くか」





そう思ったが、戻るのも面倒だ。最後の望みを掛けて、扉の
取っ手を握った。





「あ」






開きやがった。何してんだ。俺は出る時ちゃんと鍵掛けたぞ？
あのワカメか？



アイザックは、不用心な太宰に喝を入れてやろうと誓う。




けれど、此処は探偵社の社員寮である事は判っている。



武装探偵社を、態々敵に回す様な泥棒は中々居ないだろう。






「お邪魔します」





アイザックは一緒に住ませて貰って居る身。冗談にも、ただいまと云える立場では無かった。





太宰も次期に帰ってくるだろう。



冷たい川で死にかけたのだから、温かい料理でも作ってやろうと思うが。






「…やべ」






過去に料理をした事があったとしても、その作り方を覚えていない。



何て不便な異能力だ。






「取り敢えず…これか」





冷蔵庫を開けると、卵がいくつかあった。



卵を使えば、何でも美味しくなりそうではある。




すると、謎に沢山ストックされた蟹缶がアイザックの目に入った。






「…好きなのか、多分」






如何する。卵と蟹缶使っても美味しいのでは？しかし何か寂しい。物足りなさを感じる。




卵を手に持ちながらそう考えると、卵が割れた。







「え、な、なん」






別に力を入れようと思って入れた理由では無いのに。



卵が割れるのが悪い。脆すぎる。






「あぁもう…！」






苛立った様子で、床に垂れた卵を拭き取る。




意識して居ないのに卵を潰して仕舞ったり、これしきの事で苛立ったり。




アイザックが太宰に『短気ゴリラ』と呼ばれる所以(ゆえん)は、まさに
これだろう。









先ず、卵を焼こう。




焼けば食える。






アイザックは、フライパンに油も敷かずに卵をフライパンに入れた。







「ちょ、殻！殻は入るなお前！」






青年は、殻に話し掛ける。





殻は入るし、油を敷かないせいで焦げるしで、これは失敗したと悟った。





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要注意異能力者＿＿＿＿内務省異能特務課より。

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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