第六十六舞『恍惚たる決意』 ページ16
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路地裏で少女を助けた時から、丁度一日が経ったのだろうか。
解放され、街を歩いて居る時には…昨日と同じ様な赤い太陽が
影を伸ばして居た。
久々に外の空気を吸った気がしたアイザックは、思い切り伸びをする。
アイザックには、武装探偵社に鷗外から聞いた話を伝える義務が課された。
この平和な街に、未だ脅威が隠されている。
三ヶ月経った今、横浜連続爆破事件の被害も少しは残っている
が、かなり回復して来て居る。
アイザックは後ろを振り向き、空に届きそうな高層ビルを眺めた。
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アイザックがポートマフィア拠点から出る少し前の事だ。
『アイザック君にはね、申し訳無いけど…早く真紅の氷の異能を取り戻して欲しいのだよ』
取り戻して欲しい、とは。
服従すべき主人が絶命した今、アイザックに真紅の氷の能力は
使えないのだ。
主の無い今、アイザックの異能は何者の血をも欲し、それを
受け付ける。
『勿論私でも善い。厭ならば幹部の誰かにするかい?』
アイザックは溜め息を吐き、首を横に振る。
鷗外を見詰め、それは愚問だと口角を上げた。
『空の注射器寄越せ。
アイザックは鷗外に手を出し、急かす様にその手で煽った。
鷗外は一瞬止まったが、注射器を投げてアイザックに渡す。
ぱしんとそれを受け止め、背を向けて執務室を出ようとする。
『この街を守る為なら、俺は協力する。でもまぁ…残念』
アイザックは、ひっそりと色香を含んだ笑みで、その横顔を
鷗外に向ける。
『俺のご主人サマは、もう決まってる』
それには、覚悟があった。
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自然と足を運んだのは、太宰の家の前だ。
扉に手を掛けようとしたが、その手はピタリと止まった。
アイザックは俯き、踵を返して太宰の家の前から離れる。
すると、背後から聞こえて来たのは…太宰の叫び声だった。
バン、と扉が開いた。
「何と云う事だ…!真逆私の前に現れるとは…!」
そう出てきた太宰を、呆れた様に見た。
「あれ、アイザ君!遅かったねぇ。…如何したの?私の家は
此処だよ?」
その言葉に、アイザックは切なくも微笑んだ。
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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