死ぬより先に、どうか殺して呉れ。双【文豪ストレイドッグス】

第六十四舞『予知せよ壊滅』 ページ14

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アイザックの記憶が無い方が、鷗外にとっては都合が良かった。





四年前…敵組織のミミックに、織田の養っていた孤児の居る場所を漏洩(リーク)したのは…、





他でも無い彼、森鷗外だからである。










拳銃は取り上げられて仕舞った。





しかし隠しやすい短刀は、腰の辺りに何時も常備してある。







「まぁまぁ、そう怖い顔をしないで。私は本当に君と話がしたいだけなんだ」






毒蛇の様に殺気立った気配を、自身の身の周りに漂わせる。




そうしてアイザックは、全てを抑え込む様に目を瞑った。









＿＿＿＿救え無かったのは、自分だったのだから。








再び目を開けた時には、殺戮の気配は消えていた。








「聞いてくれる気になったかい？」






「…少しはな」






それは善かった、と鷗外は目を細めた。







「現在、我々ポートマフィアと探偵社は、停戦状態に有る。この機会に…是非やって置きたい事があるのだよ」






鷗外は机に肘を着き、両手の指を絡めた。




正面から見た鷗外の口元は隠れ、どんな表情をしているか…一向に判らなくなる。







アイザックは片手を腰に当て、立ったまま話を聞いた。





一方の中原は、アイザックが鷗外に妙な事をしよう物なら…直ぐに動ける様、鷗外の隣に立つ。





銃を持った黒服の警備も、執務室の入口付近に配置され、緊張が張り詰めた。







「アイザック君。君の父親は…とんでもない物を、この横浜の
近海の底に遺して行ったよ」






アイザックの父親…シンガーの作品は、サクリファイスだけでは無い。






「シンガー君はね、自分の最高傑作は三つあると云って居たよ。アイザック君は何だと思う？」







「…サクリファイス、その海の底にあるとやらのヤツ、あと一つ
は……知らねぇ」






アイザックは、鷗外から顔を背けて云う。






「君は知って居るのでは？海の底にある異能兵器をね」






それは、何時の日か横浜を脅かした異能兵器…


滅びをもたらす紅蓮の天球＿＿＿＿��殻(シェル)�瓩茲蠅�、規模は小さいが…。






アイザックは知って居る。







「…ッ！」






アイザックは腰から短刀を取り出し、器用に掌でそれを回転させた。





そして素早く、鷗外の喉元へと短刀を突きつけるも、アイザックの腕を中原が止めて居た。







「善いかよマフィアの首領、アレに関わんな。俺もアレの解除の仕方は…知らない」






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要注意異能力者＿＿＿＿内務省異能特務課より。

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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