死ぬより先に、どうか殺して呉れ。双【文豪ストレイドッグス】

第六十三舞『紅涙の黙示』 ページ13

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目覚めが悪い。





元より、この体勢で眠って居たからと云う事もあるのだが、それよりも。








「おいアイザック。さッさと起きやがれ」







目覚めの第一声に、中原の声。





それに加え、踏み付けられて起こされたのだ。







「…止めろ帽子」






頬を引き攣らせ、怒りが爆発するのを抑える。





アイザックは、今にでも中原に噛み付きそうな顔をしている。




ヘッドボードに拘束された両手をばたつかせ、早く解放しろと目で訴える。







「俺だッて昨日は散々だッたぜ。何たッて…風呂の入口まで付きっ切りで 手前の傍に居なきゃなン無かったからな」




「俺だって寒気した」





云い合って居る内に、中原は短刀でアイザックを拘束して居る縄を解いた。




アイザックは、少し痣になった手首を眺め、溜め息を吐いた。






「首領は帰って来てる。待たせンなよ」







中原は顎を使って、アイザックを誘導する。





待たせたのは其方の方だと、アイザックは思った。





廊下を移動する最中…やけに大人しいアイザックを、中原は少々不気味に思った。





そんなアイザックに、中原は云う。







「…手前、大人しいとキメェ」




「…朝は何も…やる気にならないだけだ。何とでもどーぞ」





太宰なら、此処で感性のある悪口を云って来るが、中原は太宰程 悪口が上手くない。





「そうかよ、低血圧野郎」




中原が立ち止まったかと思うと、黒い帽子を取って手に持った。



コンコン、と正面の扉をノックした。







「首領、中原です」








中原に感じられたのは、忠誠。





先程までの傲慢さは何処にも無く、礼儀正しく部屋に入室した。






「やぁ、中也君。彼の世話を有難う」




「いえ、大した事では」





中原は軽く頭を下げ、後ろのアイザックを見た。





「何してンだ。早く入れ」






中原に云われ、アイザックも執務室に入る。



アイザックの態度は中原とは真逆で、『反抗』の色が見えた。






「随分と久し振りじゃないか。アイザック君」






鷗外は頬杖を着いて笑い、冷たい瞳でアイザックの変化を見渡した。







「…用件」






アイザックは鷗外の冷たい瞳には臆せず、一言云い放つ。







「うん？」





「俺に用件があるなら、後二分で済ませろ。俺は今、甘い物が
食べたくて堪らない」





アイザックの鋭い目付きが、赤く輝いた。





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要注意異能力者＿＿＿＿内務省異能特務課より。

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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