第六十一舞『悪逆と非道』 ページ11
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____人を殺した。
初めて人を殺したのは、未だ十歳にも満たない頃。
遥かに自分の身体より大きくて、屈強な男を殺した。
『其れだ、お前の力は。主の為ならば獣にも成る。それがお前の異能力だ』
そう幼いアイザックに告げたのは、まだ若い彼の父親だ。
初めて父親に褒められ、その時はこれが正しい事だと思った。
其れからは父親に云われるがまま、人を殺した。
其れが正しい事では無いと気付いたのは、十三歳の時。
泣きながら、子供だけはと懇願する親子を手に掛けた時だった。
初めて手が震えた。
其れを父親に云えば、父親はこう云ったのだ。
『マフィアを裏切って抜ける。貴方はただ引き付けなさい』
変わった口調で、期待外れだと云う目を…された。
何を云おうと、結局はこの血の契約に逆らえない。
その日少年は、沢山の血を見た。
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アイザックが目を開けると、辺りは真っ暗だった。
両手は真上で拘束されていたが、寝る分には問題無かった。
重い瞼に逆らい、辺りを見渡した。
見つけたのは…淡い橙色の光。
その光は、寝台から少し離れた場所で、椅子に座る一人の女性を照らして居た。
じいっ、とアイザックが光を眺めて居ると、女性はこちらに気付き、立ち上がった。
そして、アイザックに近付く。
「目が覚めたかぇ?鷗外殿は未だじゃ。眠って居ると善い」
普段は束ねて居る赤髪を、下げていた。
「…紅葉」
「鏡花は元気にしておるか?そなたは探偵社に居たのであろう?」
アイザックは眠気と戦いながら、尾崎を見上げた。
「…元気だよ。俺の前髪で、三つ編みする位にはな」
アイザックは微笑し、再び目を閉じた。
「悪いけど、電気付けて」
尾崎は疑問に思ったが、部屋の電気を付けた。
眩しさに目をぎゅっと瞑り、ゆっくりと目を開ける。
はっきりと見えたアイザックの成長振りを、尾崎は少しの間見詰めた。
「明かりを付ける必要があったか?」
長い袖口を口元に当て、未だに眠そうなアイザックを見下ろす。
「…最近は、寝るのが怖い」
前までは、寝る事は好きだった。
「なぁ、俺腹減ったんだけど…何か食べさせてよ」
アイザックは、からかう様に軽く笑った。
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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