【 まふまふ 】ほっとみるく【 歌い手 】

じゅうきゅう。 ページ21

「どうしたの？ 上がっていきませんか？」
「い、いや…お邪魔してもいいかな」
「うん、勿論」


(ああ、
彼にみとれてたなんて言えない。)

私の好きな人は、
そらるさんなのに。

私は、
まふくんのことなんて
1ミリも好きじゃないのに。

なんて、
そう言ったら嘘になるかもしれない。

まふくんにキスされてから、
どうも調子が可笑しいんだ。

具合が悪い、とか
そういう意味じゃなくてね。

リビングに上がらせてもらって、
少し見回してみると、なにやら
アニメのグッズがたくさんあった。

それと、
並べられたギター。


「あの、これ…この前のお礼。ケーキ買ってきたから食べよ？」
「わ…本当に？ やった」


なんて、
無邪気に笑う彼が
なんだか可愛くて素敵で。

「お皿取ってきます」
なんて少し小走りでキッチンに向かった。

まふくん、
ケーキ好きそうで良かった。


「これで大丈夫かな」
「うん、乗ると思うよ」


適当に持ってきたであろう
小さめのお皿は、いい感じに
ケーキが乗るくらいの大きさだった。

フォークも貸してもらって、
ケーキの箱を開けた。


「ミルフィーユとタルトタタン、どっちがいい？」
「わ……えっとえっと…」


なんて、
目を輝かせて
ケーキを選ぶ彼がやっぱり
“彼”とは違う素敵なところがあって。

って、だめだめ。

目移りなんて
そんなのただの浮気じゃないか。


「えっとじゃあ…タルトタタンで」


なんて、
嬉しそうにタルトタタンを
自分のお皿に持っていった。


ああ、
なんか癒されるな。

さっきのことも、
全部忘れちゃいそうなくらい。

二人でいただきます、
なんて手を合わせてケーキを頬張った。

うん、
やっぱり美味しい。

目の前を見ると、
まふくんも美味しそうに食べていて
買ってきて良かった、なんて笑みが零れた。

すると、
彼の手が伸びてきて
少し驚いた。


「あは、クリームついてる」


指で、
拭き取ってくれたのかな。

そういうところ、
どうせ無意識なんでしょ。


「あ、ありがとう」


惚れたら、
どう責任取ってくれるの。

にじゅう。→←じゅうはち。

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