【 まふまふ 】ほっとみるく【 歌い手 】

に。 ページ3

家を出て、
鍵を閉めて最近買ったマフラーに顔を埋める。

暖かい。

コートとマフラーって、
最強なんじゃないか、なんて
小学生みたいなことを考えた。

うん。
一理あると思う。

って、

僕の頭は小学生並だろうか。


「おーい、まふ」
「そらるさーん」


家を出るとすぐに、
黒いふさふさの髪を見つけた。

目、腫れてないかな。

昨日も泣いた、
なんて言ったらそらるさんは心配するよね。

だから言わない。

ううん、
これだけは言えない。


「ん、お前、目腫れてね？」
「そうですか？」
「泣いたの？」
「泣いてないですよ〜」


なんて、
軽く笑って流した。

やめて、
その件に触れないで。

そらるさんのこと、好きだ。

大好きだよ。

勿論、
恋愛感情じゃなくて
友達…親友、として。


このことに関しては
普通の人が僕の位置だったら
そらるさんに対して嫉妬の渦を巻いているだろう。

でも僕は、
そんなことしたらそらるさんが
離れて行っちゃうんじゃないかって
心配になるから、そんなことできないんだ。


「そうそう、明日Aと映画行くんだけどさ」
「…えい、が」
「ん、今面白いのやってるっけ？」


Aさんと、映画行くんだ。

いいなあ、
僕も行きたいな。

Aさんと二人で。

ああだめ。


また、
目から雫が垂れるから。


「あは、僕がそういうのに疎いの知ってるでしょー」
「だってお前面白いんだもん」


僕は十分強くなった。

こんな風に、
彼女の話をしても“表では”笑えるほどに。

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