▽マイナスイオン大放出。 ページ2
「はまちゃんさんですか？」
「あ、はいっ、濱田です……あっ」
依頼人は仮名を使って申し込むんだけど、
…あっさり本名を知ってしまった。
「あのー。先輩なんで敬語を使わなくていいですよ」
「えーじゃあそうするわぁ。Aちゃんやね？」
「はーい」
優しそうな人だなぁ。
まぁお客さんは基本皆いい人だった。バイトはじめてそんなに経ってないけど。
「というか、屋上でのバイトって斬新ですね」
「いやぁ、せっかく同じ学校の子だったからー」
「でも、この時期の屋上は最高ですよねー」
あぁ良い。
この人からマイナスイオンが大放出だ。
しかし、私は恐ろしいことに気づく。
「―――肩がないッ！？」
「あー俺超なで肩なんよぉ」
「な、なんたること…」
「えぇ！？」
めっちゃ声裏返ってる。
「もたれかかる肩がないじゃないですか…」
「え、やってみよ？」
隣によって、肩(?)にそっと頭を乗せる。
ずるっ
ごちーん
「(泣)」
「あぁぁ…ごめん！ごめんな！」
「もーいーですー」
諦めてその場に寝転がる。
携帯している枕をはまちゃんにも渡す。
「わっ、ふわふわや！」
「えへ。ソフレとして当然のことをしたです」
今後ともご贔屓宜しくお願いします。
ちゃっかりセールストーク。
「はまちゃんはいいですね」
「んー？」
「話してると和やかな気持ちになるし、なんだかいい匂いがします。寝るのにもってこいです」
「えーうれしっ。あ、もっと近く寄る？」
「あ、それは結構です」
「……」
はまちゃん、面白いな。
いいお客さんだし、普通にいい人だ。
仲良くなれたら嬉しい。
リピーターになってくれたらもっと嬉しい。
「はまちゃんはどぉしてソフレ頼んだんですー？」
「いや、ちょっと受験勉強に疲れちゃってさー」
ほら、俺あほやから…と力なく笑うはまちゃん。
「ほら、って言われても知らんですけどねー」
「あ、そっか」
「気持ちよく寝るのはリフレッシュですよー。勉強ばっかじゃ疲れちゃいます。まぁ私は授業ほとんど寝てるんですけどねー」
「え、まじか…だいじょぶなん？」
「だいじょぶー」
「おーならいっか」
「…しげとは大違いだ」
「え？しげ？」
「あ、私の知り合いです」
「えー俺も知ってんで！てか仲いいし」
「わー世界せまいー」
だらだら喋っている間に私の瞼は落ちていった。
多分はまちゃんも。
この日から、たまにはまちゃんの昼寝に付き合うことになった。
同じ学校＆マイナスイオンありがとう割引の格安で。
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作者名：ひめりんご | 作成日時：2020年4月30日 0時
