1年前、オフィスにて ページ4
＿＿すべての始まりは1年前の出来事だった。
「お疲れ様です、Aさん」
「お疲れ様です」
当時の私はデザイン系の会社に勤めていて、会社の立ち上げ当時からいる私は社内でもそれなりのお仕事を貰えていた。
同僚や後輩の帰宅を見送って、自分のデスクで今日中に片付けてしまいたい仕事をリストアップしていく。
連日こうして沢山の仕事と向き合う事は確かに大変ではあるが、私は確かな充実感も感じている。
何よりも、私はこの仕事が大好きだったからだ。
「A」
「高杉さん」
不意に背後から掛けられた声に椅子を回して振り返れば、帰り支度を終えたらしい高杉晋助さんが私を見下ろしていた。
「まだ上がれねェか」
「いえ、明日に回せるものばかりです」
高杉さんはこの会社の代表取締役、つまりは社長さんである。
厳しいことも沢山言う人ではあるが、こうやって社員のことを案じてくれる辺り根は優しい人なのである。
「なら、お前さんも一緒に帰るだろ？」
「……はい、そうします」
いつの間にか他の社員は帰宅し終わり、オフィスに残されたのは私達2人だけだった。
隠すような事でも無いが、私は晋助さんとお付き合いしている。恥ずかしながら、この歳にして初めての恋人だ。
一緒に帰るのはいつもの事だけれど、やっぱり改めて嬉しく思えて小さく笑うと、晋助さんは「笑ってねェで支度しろ」と頭を小突いた。
「私以外の社員にやったらパワハラって言われちゃいますよ」
「安心しろ、お前さん以外にはやらねェ」
なんて、晋助さんは小さく笑った。
その笑顔に私は恋したのだ。
ぶっきら棒で冷たくて、何を考えているのか分からなくて言葉足らずで、我ながら恋人の欠点をこんなに沢山上げていいものか、と思うけれど事実は事実。
初めて晋助さんが笑った時はクララが立ったレベルの衝撃だったから。
「そこまで言うか」
「あっ…口に出てました？」
「思いっきりな」
でも、晋助さんの笑い方と言えばニヒルで怖い感じが大半だったから、心から笑った顔を見たときはやはり胸が跳ねた。
もっと、笑って欲しい。
もっと、笑った顔が見たい。
そう自覚してからは早かったものである。
「余計な事ばっか言ってねェで支度しろ。置いてくぞ」
「すぐ済ませますから待ってください！」
「置いてくわけねーだろ」
そんな軽口を叩き合いつつ、簡単に帰り支度とオフィスの片付けを済ませて私たちは会社を後にした。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 美鶴さん» 過去作品に加え合作の方もお読み頂き、ありがとうございます。楽しんで頂けたようで、何よりです。現実では会う機会のない方との出会いがネットならではだと思うので、上手く活用していけたらなぁと思います。坂田嫁会は割と宴会でした笑。 (2018年9月26日 21時) (
レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
美鶴(プロフ) - 嫌味ではないです！笑応援しています！これからも頑張ってください！ (2018年9月25日 23時) (レス) id: 960f3fe6a3 (このIDを非表示/違反報告)
美鶴(プロフ) - 凄く前にましろさんの作品を読ませて頂いてほっこりしておりました！合作の方も読ませて頂きました！とっても面白かったです！…オフ会…羨ましいです……坂田嫁会楽しそうですね！ (2018年9月25日 23時) (レス) id: 960f3fe6a3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 夜兎姫・ルナさん» お久しぶりです、ありがとうございます！！拝啓とは毛色の違う作品ですし、更新頻度もどうなるかは分かりませんが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2018年9月17日 13時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
夜兎姫・ルナ(プロフ) - おぉ！1年ぶりの新作！！ 拝啓シリーズを呼んでファンになった者です ましろさんが復帰するのを心待ちにしておりました！更新頑張ってください！応援してます！ (2018年9月17日 8時) (レス) id: db897215e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ：http://twitter.com/hearty__smile
作成日時：2018年9月16日 21時
