傷付けた ページ30
自分で思っていたよりもずっと、悲しそうな声をしていた。
そして、私はようやくこの気持ちに気付いた。
私は、晋助さんを幸せにしたいと思っていて、坂田先輩には幸せになって欲しいと思っていたんだ。
今更、そんな簡単なことに気付いた。
「私のことが嫌いなら喜んでくれれば良いじゃないですか…嫌いじゃなくても、喜んでくださいよ……」
「………。」
私の言葉に先輩は押し黙る。
苦虫を噛み潰したような表情で先輩は「別にお前のこと嫌いじゃねェつってんだろ」と忌々しげに呟く。
「俺の事が嫌いなのはお前の方だろ」
「……。」
言うつもりはなかった。
けど、ここまできたらもう言わないと二度と伝えられない気がする。
私は、先輩に幸せになって欲しいから。
「嫌いですよ、先輩なんて」
かつて好きだった人を簡単に嫌いになる人のことが私は嫌いだった。
特に、片想いで振られてしまった人があんな奴最初から本気じゃない、好きじゃなかった、そう言う行為はどこまでも虚しい。
でも、今なら少しだけその気持ちが分かる。
私が好きになったあの人は、こんな風じゃなかったから。
「でも、それは坂田先輩が誰よりも思っていることじゃないですか」
「……。」
「そうやって他人を傷付けてまで境界線を引くのは、本当は自分が傷付くのが怖いからですよね」
きっと、それが彼の本質だった。
誰にも本気にならないのは、他でもない彼が自分を守る為の術で、それなのに彼は結局優しい人だった。
中途半端だったからこそ、坂田先輩はずっと自分で自分を傷付けている。
それに私は気付いていた。
気付いていながらも、私はぶつかったのだ。
本命とは付き合えないという坂田先輩に傷付けられて、そうして私も傷付けた。
だから私も先輩と同罪だ。
だけど私は気付いて欲しかった。
本命とは付き合えない先輩と遊びとして側にいた彼女達は誰一人として遊びでは無かった。
誠実に、真っ直ぐに、坂田先輩のことを想っていた。
だけど、それを必死に隠して遊びのフリをしていたのは、紛れもなく。
「坂田先輩が自分自身のことを嫌いだと分かっていたから誰も先輩に好きだと言えなかった」
本当にすごいと思う。
私は坂田先輩の気持ちを考えられなかったけれど、私はぶつかる事しか出来なかったけれど。
「坂田先輩が嫌いな坂田先輩を…ちゃんと、好きでいたんです」
全員が全員そうだった訳じゃ無いけれど、私はそんな人達を何人も知っていた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 美鶴さん» 過去作品に加え合作の方もお読み頂き、ありがとうございます。楽しんで頂けたようで、何よりです。現実では会う機会のない方との出会いがネットならではだと思うので、上手く活用していけたらなぁと思います。坂田嫁会は割と宴会でした笑。 (2018年9月26日 21時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
美鶴(プロフ) - 嫌味ではないです!笑応援しています!これからも頑張ってください! (2018年9月25日 23時) (レス) id: 960f3fe6a3 (このIDを非表示/違反報告)
美鶴(プロフ) - 凄く前にましろさんの作品を読ませて頂いてほっこりしておりました!合作の方も読ませて頂きました!とっても面白かったです!…オフ会…羨ましいです……坂田嫁会楽しそうですね! (2018年9月25日 23時) (レス) id: 960f3fe6a3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 夜兎姫・ルナさん» お久しぶりです、ありがとうございます!!拝啓とは毛色の違う作品ですし、更新頻度もどうなるかは分かりませんが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2018年9月17日 13時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
夜兎姫・ルナ(プロフ) - おぉ!1年ぶりの新作!! 拝啓シリーズを呼んでファンになった者です ましろさんが復帰するのを心待ちにしておりました!更新頑張ってください!応援してます! (2018年9月17日 8時) (レス) id: db897215e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2018年9月16日 21時