微睡んで、微笑んで、君に恋して。【銀魂】

それぞれの仕事 ページ20

「じゃあ、俺達は早速サンプル案いくつか出すか」
「そう…ですね」

集中しなければいけないと分かっているのに、これから同じ企画を共に行なっていくのか、と思うと坂田先輩とどう接して良いのか分からない。

でも、きっと、気まずさを感じているのは私だけだ。

坂田先輩の一挙手一投足に翻弄されて動揺するのは私だけで、坂田先輩の中ではとっくの昔に区切りの付いた話で、むしろ始まってすらいなかったのかも知れない。

(もう、やめよう。私には晋助さんが居るんだし)

これから仕事で関わる事も沢山あるかも知れないけど、坂田先輩があぁいう他人行儀な態度でいてくれるなら、私もそうするべきだ。
分別ある大人なら、それが普通だ。

そうして、私はこれから先の不安を吹き飛ばすように先に会議室を後にした晋助さんを追った。


＊＊＊

「先方のétoileは若い女をメインとしたブランドだが、今回はいつもより大人っぽい路線で行きたいそうだ。カタログも全体的にポップな配色ではなく、暗めの色を使おうと思う」

オフィスに戻って来た私達は先程の会議の内容を掻い摘んで社員のみんなに伝えた。
étoileと言えばパステルカラー、マカロンカラーのイメージが強いのだが、今回発表される新作は落ち着いた色味のものが多い。

新作に合わせてカタログも配色や装飾に大人っぽさや落ち着いたイメージを持っていきたい、というのが先方のリクエストだった。

「それじゃあ、各自で仮案を考えてくれ。集まった中から幾つかピックアップして先方に見せるからな、採用されるよう期待してるぞ」

と、晋助さんの激励の言葉でミーティングは終わった。

私も仮案を出したりしたかったのだが、最近の私の仕事は専ら集まった仮案の組み合わせ作業であり、みんなの仮案が集まるまでは待っていなければいけない。

何もしない訳にもいかないので、過去のétoileのカタログを見返したり、étoileを紹介した記事を読んだりする。

(こうして見ると、やっぱり可愛い服が多いんだよなぁ)

étoileの方向性は私よりも若い世代の女の子だったりするのだが、ターゲットとしていない世代でもワンポイントとして入れると結構可愛く見えるものも多い。
最近は店舗も増やしているという話だし、今回の企画が上手く行ったらお互いにとってかなり有益になるのだろう。

恐らく、今回の新作も新しい客層も視野に入れたものだろうし、今更ながら緊張感が増してきた。

待ち人、来たる。→←打ち合わせ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す