Seventh. ページ7
本部へと走らせる車の中、中也はずっと考えていた。
どうも先程のAの顔が頭を離れない。
翳り____若しくは恐怖や緊張といった負の要素を、確かに中也は感じたのだ。
____まぁ、金持ちなんて何奴も此奴も汚ねェ奴らだからなァ…
自分には分からない苦労が、彼女に有るのだろう。
してやられているAを想像しようとして、それこそ想像もつかないとかぶりを振った。
あの神経の図太さなら心配することも無いだろう、と。
すると後部座席の立原が、やけに神妙な口調で言葉を紡いだ。
「A嬢……大丈夫ですかね……?」
「何が」
「いや、彼の学校っていい噂ないじゃないですか。なんか見た事あるなーと思ってたら、彼処、先日も犯罪隠蔽で処理に回ったところです」
「…へェ?そんなもんだろ金持ち学校なんて」
「でも先程のA嬢、明らかに不自然でしたよね?」
____なんだコイツ、めっちゃ心配してんじゃねェか。
人を消す事だけを生業としている割には人間の心を持っているのかと感心しかけた中也だが、唐突に昨日見た書類の一節がフラッシュバックした。
____《__学園は現在、カースト上位の者を蹴落とし破滅させる【下剋上】が盛んに行われている》
「…なあ立原」
「はい?」
「近衛グループって現時点で企業クラス的にはどのレベルだ?」
「そりゃあもうトップですよ。何せ海外にまで手ェ伸ばしてますからね」
途端、中也の中に嫌な思いが渦巻いた。
黒く、透明な、確信に近い“勘”。
今日の全てが繋がる感覚に、思わず舌打ちした。
揺れた緋が、脳裏にチラついた。
「立原お前、暫くAを注意深く見てろ。潜入したっていい。多分彼奴は____」
*〜*
最初は文字。次に針。
昨日は鋏で、今日は水。
冷たくなる身体に、心が冷えていく感覚はもうとっくに慣れてしまった。
此処は汚れている。
人間の穢れを酸素にして、弱者の屈辱を餌とする獣の巣。
沢山の人間が捕食され、朽ちた。
そして新たな餌が少女____近衛Aだ。
「醜いわね。幾ら近衛と云えどもこの学園では籠の鳥と同じ。
____貴女が悪いのよ?“Scarlett” 」
醜い顔で笑う愚かな女を睨みつける少女の目は、燃えるように緋い。
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一華 顕音(プロフ) - GALAXYさん» コメントありがとうございます!番外編が完成しましたので、良ければ呼んでください! (2016年8月10日 21時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷるぱい猫系女子 - 此奴等が可愛すぎて大声上げて発狂しそうです (2016年8月6日 20時) (レス) id: 26e00e8d74 (このIDを非表示/違反報告)
華京院アリス - お久しぶりです。立原がいいぐあいに出てきますね!夢小説であんまり出てこないので新鮮です。あと、中也がだんだん惹かれていく感じがまたたまりません!改めて中也好きだなと思いました。文ストのなかで一番いい話ですよ!これからも更新頑張ってください!待ってます (2016年8月1日 15時) (レス) id: 0f9149ddd8 (このIDを非表示/違反報告)
蘭 - あぁぁぁぁぁぁぉぁあ!(歓喜)どっちも応援したい! (2016年8月1日 10時) (レス) id: 53c8339ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - ああああ(((立原君に頑張ってほしいけど…やっぱへたれちゃんな中也君に頑張ってほしいです!!!! (2016年8月1日 9時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2016年7月10日 23時