Thirty-fifth. ページ36
ポートマフィア本部、最上階の一室。
闇を統べる男の前にいたのは、光を貪る男。
静かな怒りを含んだ笑顔と、冷酷に柔らかい笑顔は対峙していた。
海外ブランド特注のスーツに、紅緋色のストールをあしらった男が、口を開いた。
「あのさぁ森医師。話が違いません?」
「話が違う、とは?具体的に言い給えよ」
「なんか企んでるでしょ。本当その性格変わんないよね」
「そうかい?君も相変わらず腹の中真っ黒なのによく表で生きていけるよねぇ____近衛君」
ポートマフィア首領、森鷗外。
近衛グループ総帥、近衛明仁。
表と裏、白と黒、正反対の2人の関係性は簡潔に述べるなら“元上司”と“元部下”だ。
Aの実の父親である彼には、Aにさえ言っていない過去がある。
全ての権力と財力を持って隠蔽した、華麗なる歴史が。
亜麻色の髪を無造作に乱した彼は、冷たく乾いた笑いを零した。
「アンタが先代の首を掻っ切ったのは正解だった。今の此処は素晴らしい」
「君がいなくなったのは大損害だったよ。君が抜けたりなんてしなければ此処はもっと居心地が良かっただろうに」
「そう、太宰。修治君……いや、治君?彼の子が居なきゃ、僕が“最年少幹部”だったのになぁ」
「その彼ももう居ないのだよ。____ご存知の通り」
「……ふーん、話が早くて助かるね」
史上最年少幹部、太宰治。
彼が幹部となる前に“史上最年少幹部”として残虐の限りを尽くした男。
それが近衛明仁である。
太宰と彼が直接対峙したことはなかった。
長年彼が守り続けていた記録を太宰が破り、彼が太宰に会いに来るまでは。
「で、本題だけどね?森医師」
「もう私は医師ではないんだけど」
「じゃ、森さん。____此奴誰?」
明仁が突きつけた写真に写る、一人の男。
血に染まるナイフを振るい、笑っている帽子の小柄な男。
森は明仁が何が言いたいのかを分かっていた。
彼をここまで怒らせるものなんて金の他に、一つしかない。
____愛娘、Aの事だ。
彼はさぞ怒っていることだろう。
森は契約そのものを破綻させかねない、重要な嘘をついたのだから。
それでも森は、ニコリと笑った。
「彼は、中原中也君。現幹部の中で最年少の、非常に優秀な、Aちゃんの
「契約条件に用意する筈の
「先程君に言ったじゃないか!
____
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一華 顕音(プロフ) - GALAXYさん» コメントありがとうございます!番外編が完成しましたので、良ければ呼んでください! (2016年8月10日 21時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷるぱい猫系女子 - 此奴等が可愛すぎて大声上げて発狂しそうです (2016年8月6日 20時) (レス) id: 26e00e8d74 (このIDを非表示/違反報告)
華京院アリス - お久しぶりです。立原がいいぐあいに出てきますね!夢小説であんまり出てこないので新鮮です。あと、中也がだんだん惹かれていく感じがまたたまりません!改めて中也好きだなと思いました。文ストのなかで一番いい話ですよ!これからも更新頑張ってください!待ってます (2016年8月1日 15時) (レス) id: 0f9149ddd8 (このIDを非表示/違反報告)
蘭 - あぁぁぁぁぁぁぉぁあ!(歓喜)どっちも応援したい! (2016年8月1日 10時) (レス) id: 53c8339ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - ああああ(((立原君に頑張ってほしいけど…やっぱへたれちゃんな中也君に頑張ってほしいです!!!! (2016年8月1日 9時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2016年7月10日 23時