Twenty-seventh. ページ27
小さな身体を抱き締めた。
赤く染まった髪を撫でた。
きつく、きつく。
逃がさないと、独占欲を翳すように。
切れそうな喉から絞り出すように、名前を呼んだ。
「無事で、本当に、よかった……っ
________________A嬢」
縋り付いた細い腕の震えが愛おしい。
嗚咽を漏らして、弱々しい姿が愛おしい。
それと同時に、激しい嫉妬に震える。
こんなにも、愛おしいのに。
どんなに願っても、この人は手に入らない。
その事実だけが、立原を胸を締め付けた。
それでも今だけは、この人をこの腕に閉じ込めていられる。
自分だけが、この温もりを感じられる。
それが____一瞬の夢だとしても。
「……遅い。私を、待たせすぎよ、馬鹿」
「ごめん。ごめんな、怖い思いさせ、て……」
しかし立原はそこで違和感に気づいたのだ。
噎せるような、血の匂いに気づいたのだ。
____なんで、こんなに人が死んでるんだ?
転がる屍と、赤すぎる少女の手の理由も。
それを理解した瞬間、立原は____更に強くAを抱きしめた。
「ナオミ!!!!」
「Aちゃん!ナオミさん!!」
「兄様!!敦さん!!」
だって、自分が最初にここに辿りついたのだ。
中原中也、のような青年と少女を見て我を忘れて、青年を撃って。
黒髪の少女が怯えた目を向けていることにも今更気づいた。
「なんで、こんなに、人が……」
「____Aちゃんが、私を、助けてくれたの。
その手を、汚してまで」
静まり返った空気に、大きく震えた愛しい少女の頭を優しく撫でる。
そうせざるを得なかったから、そうしただけだ。
彼女は、何も悪くないのだ。
きっとこんなのは、悪い夢だから。
「大丈夫だ、A嬢。もう何も心配ない。怯えることなんて、何も無い」
「っ……怯えて、なんて……っないわ……」
ただ、ただ、言葉が見つからない。
自分の頭では、そんなことしか言えない。
もう精一杯なんだ。
彼女の事を想い過ぎて、苦しい。
本当に言いたい事なんて、許されないから、呑み込んで。
そうして胸が痛むから。
___「ッ____A!!!!」
切羽詰った声が近づく。
「____チュウ、ヤ」
本当の王子様が現れるまでは、どうか。
彼女の王子様でいたいと願うのは、そんなにいけないことだろうか。
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一華 顕音(プロフ) - GALAXYさん» コメントありがとうございます!番外編が完成しましたので、良ければ呼んでください! (2016年8月10日 21時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷるぱい猫系女子 - 此奴等が可愛すぎて大声上げて発狂しそうです (2016年8月6日 20時) (レス) id: 26e00e8d74 (このIDを非表示/違反報告)
華京院アリス - お久しぶりです。立原がいいぐあいに出てきますね!夢小説であんまり出てこないので新鮮です。あと、中也がだんだん惹かれていく感じがまたたまりません!改めて中也好きだなと思いました。文ストのなかで一番いい話ですよ!これからも更新頑張ってください!待ってます (2016年8月1日 15時) (レス) id: 0f9149ddd8 (このIDを非表示/違反報告)
蘭 - あぁぁぁぁぁぁぉぁあ!(歓喜)どっちも応援したい! (2016年8月1日 10時) (レス) id: 53c8339ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - ああああ(((立原君に頑張ってほしいけど…やっぱへたれちゃんな中也君に頑張ってほしいです!!!! (2016年8月1日 9時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2016年7月10日 23時