Thirteenth. ページ13
笑い続けるAに最初は安心していた中也だが、その笑いっぷりに段々と腹が立ってきた。
柄にもない事をした羞恥心と、笑われた事に対する羞恥心に震える中也を見て、更にAは笑い続ける。
中也はついに痺れを切らした。
「いい加減笑うのを止めろ糞女!もう優しくしてやんねェぞ!!」
「____は?優しく?どこが…っふはっ」
「〜〜ッ!人の気も知らねェで…っ!!!!」
この数日、中也はほぼ寝ずに調べてたのだ。
Aの周りで起こっていることの全てを。
ただ許せなかった。
全身の血が沸騰するような怒りが収まらなかった。
自分の好みでも無い只管に癇に障る女が____その凛とした強さが脅かされる事が。
Aの気高き純粋が穢される事が、ただ。
触れた肌の冷たさが鮮明で、焼き付いて、眠ることもままならない程に。
笑うAの美しさに息を呑む。
少し乱れた髪を一房掬い上げ、自然な流れで口付けを落とした。
鮮緋の目が、自分を捉える。
其処に、見た事の無い自分が映った気がした。
見た事の無い、少女の顔を見た。
____次に息を呑んだのは、Aの方だった。
「っ……急に、何」
「……いや?大した理由はねェよ」
____ただ、綺麗だなって。
得体の知れない感覚に、Aは戸惑った。
駆け巡った甘い痺れに、身体が震えた。
熱を孕んだ目に映る自分は、驚いた顔をしていた。
知らない、感じたことの無い熱が____全身を熱くした。
顔を背け、俯く。
真っ赤に染まった耳が中也の加虐心を擽った。
挑発的に笑った中也は、覗き込むように距離を詰めた。
「初心だなァ、お前」
「…うっさい」
いつもの威勢は何処へやら。
愛らしく照れるAは歳相応の幼さがあった。
しかし、真っ赤な頬と、弱々しく反抗する目が色っぽくて、囚われたように目が離せない。
頬に伸ばしかけた手は、近付いてくる足音に静止された。
我に返った中也は、帽子を被り直してドアの方へと歩き出した。
「あとは、心配すんな。何とかしてやる」
「だから、」
____先刻みたいに笑え、A。
*
「A嬢!目覚めたのか…!____A嬢?」
中也と入れ違うように中に入ってきた立原は、Aの様子がおかしい事にすぐに気が付いた。
膝を抱えて俯いたまま動かない。
まだ具合いが悪いのかと手を伸ばして、流れ落ちた髪の間に見えた赤い耳に気付いた。
それだけだ。
それだけの事が、立原の脈を乱した。
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一華 顕音(プロフ) - GALAXYさん» コメントありがとうございます!番外編が完成しましたので、良ければ呼んでください! (2016年8月10日 21時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷるぱい猫系女子 - 此奴等が可愛すぎて大声上げて発狂しそうです (2016年8月6日 20時) (レス) id: 26e00e8d74 (このIDを非表示/違反報告)
華京院アリス - お久しぶりです。立原がいいぐあいに出てきますね!夢小説であんまり出てこないので新鮮です。あと、中也がだんだん惹かれていく感じがまたたまりません!改めて中也好きだなと思いました。文ストのなかで一番いい話ですよ!これからも更新頑張ってください!待ってます (2016年8月1日 15時) (レス) id: 0f9149ddd8 (このIDを非表示/違反報告)
蘭 - あぁぁぁぁぁぁぉぁあ!(歓喜)どっちも応援したい! (2016年8月1日 10時) (レス) id: 53c8339ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - ああああ(((立原君に頑張ってほしいけど…やっぱへたれちゃんな中也君に頑張ってほしいです!!!! (2016年8月1日 9時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2016年7月10日 23時