2nd - twenty - four ページ28
彩side
「では、曲は多数決により〇〇○に決定します。」
授業開始10分。
合唱祭は割と大きなイベントだけど、
それにしてはかなり速いペースで話し合いは進んでいる。
「次に伴走者と指揮者を決めたいと思います。誰か立候補、または推薦したい人はいますか?」
・・・誰もいない。
まあ、こういうときは大抵誰も手を挙げないよね。
かといって、私も、できれば歌い手をしての自主レッスンに時間を使いたいから、
伴走者も指揮者もやりたくはない。
そもそも私は、指揮者ならともかく、歌い手になって、何かしらの音楽の知識をつけようと始めた、
キーボードをやっと弾けるようになったくらいで、伴奏なんてもってのほか。
そのおかげで楽譜は読めるようになったけれど、楽譜が読めるだけじゃ、
とてもクラスの代表の伴奏なんてできやしない。
静まり返ってしまった教室。
さすがに話し合いの司会をしているクラス委員も困っている。
と、思ったその時。
「はーい、俺、ピアノできそーな人知ってまーす!」
学年でもガラが悪いと有名な尾崎くんが、みんなの視線を一気に集めた。
成績は割と良いのに、素行が悪くてよく先生にも注意されてるんだっけ。
平和な学校生活を送るため、私は1度も関わらず、関わろうともしなかった。
「そこにいる佐久間小春さん!前に妹のピアノのコンクール見に連れて行かれたときにぃー、
佐久間さんも出てましたぁー!ちょうど1年前くらい、だったかな?」
尾崎くんが意地悪そうにニヤリと笑った。
そしてクラスもざわつき始めた。
「えーそうだったんだ・・・」
「じゃあもう佐久間さんでよくない?」
「コンクール出れるくらいだしねー」
ざわざわとそんな声が広まる。
私はなんだか嫌な予感がして、前にいる小春ちゃんに小声で話しかけた。
『小春ちゃん、大丈夫?』
小春ちゃんは我に返ったように肩を揺らした。
「え、、、、、、、大丈夫、、じゃないかも・・・。」
そう小さく聞こえた。
ひどく何かに怯えている、私はそう感じた。
事情はあとで聞くにしろ、とにかく、
今はこの空気を変えなくちゃ。
私はその一心で、他に何も考えていなかった。
頭の思考が追いついた頃には、私は手を高く上げていて、
こう宣言していた。
『伴奏を私にやらせてください。』
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MARINO - 感動しました!続き頑張って下さい。楽しみに待ってます。 (2023年4月25日 20時) (レス) @page40 id: f3d979ddd0 (このIDを非表示/違反報告)
諸星 - 涙出ちゃった!めっちゃ面白いよ!更新頑張れ〜! (2023年4月5日 16時) (レス) @page40 id: b53e3a470f (このIDを非表示/違反報告)
月夜星 - とっても面白いです!続きが気になります!更新お願いします! (2022年7月28日 13時) (レス) @page40 id: ee3f97685f (このIDを非表示/違反報告)
カタツムリ - 面白いですよ〜。更新頑張ってほしいのですよ〜。 (2021年5月1日 21時) (レス) id: e32939ee0e (このIDを非表示/違反報告)
MadCat(プロフ) - aoiさん» ありがとうございます!そろそろ完結も見えてきたし、頑張ります!!! (2020年10月11日 22時) (レス) id: 91fa778ae4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MadCat | 作成日時:2020年9月6日 17時