*ﾟ*金魚花火5*ﾟ* (ページ5)

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【１０５】side S ページ5

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和也「“銀杏の木は伐らないで”」

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ふと、和也はそんなことを呟いた。

燃えている背の高い木を見て

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和也「………燃やされたなら、マシかな。

灰になって風に乗って、空に届けばいい」

翔「何の、話」

和也「どうしようもない女性の、どうしようもない思い出の話だよ。

―――おい」

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和也は、近くを走っていた男を一人、呼び止めると

彼が持っていた水の入ったバケツを奪った。

かと思うと、頭からそれをバサァ…っと勢いよく被った。

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和也「思い出は返してやってもさ、Aまで連れて行かれるのはナシだよね」

翔「………ああ、そんなことされたら俺はまたあの人を恨むだろうな…」

和也「まずいね、それは」

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少しだけ口角を持ち上げて。和也は笑ったようだった。

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和也「野郎どもを上手にまとめるのが、翔ちゃんの役割でしょ？

火の中に飛び込んであいつを探すなんて無謀なことは、下っ端に任せておけばいいんだよ」

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タッ、と和也は駆けだした。

何の躊躇いもなく燃え盛る炎の中に姿は消えていく。

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「副組長…あの、」

翔「………消火活動、急げ」

「っ、かしこまりました！」

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俺を押さえていた男たちが、はっとしたように動き出す。

………和也、お前。気付いたか？

何が下っ端だよ。怒鳴りつけるわけでもなく、飄々としてさ

今お前。俺を諌めただろう。そして、その一言は、その行動は

俺だけじゃない。周りにいた奴ら皆が、飲まれた。一瞬で、だ。

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お前には、何か。そういうのがあるんだな。

他人を惹きつけてやまないそれは、さ

………生来の気質ってやつなんじゃないか。

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翔「次期……組長、か……」

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確かにその片鱗を見た。

案外、魚が龍に化ける日はそう遠くないのかもしれないと

そんなことを思わせられた瞬間だった。

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