*ﾟ*金魚花火5*ﾟ* (ページ11)

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【１１１】side Ayano ページ11

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彼の姿がようやく視界から消えたとき、がくっと膝から力が抜けた。

何なの、ここは。こんな場所で、息なんてできるの？

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文乃「……っ、」

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気分が悪くて、吐きそうになる。

雅紀さんへの恐怖からか、先日の智さんからの忠告が効いているのか

それとも、妊娠しているせいなのか。

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“子供が欲しいの、父親になってくれなんて言わない。

それだけは約束するわ、迷惑はかけない”

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だって、そうでもしなければ

貴方は私を見てくれない。

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和也『あいつ、元気にしてんのかな……』

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私のところに来てくれたと思ってもそれは錯覚で

貴方は暇さえあれば置いてきたはずのあの子のことばかり

会ったこともない少女の名前も、その子がどんなに周りから愛されているのかも

私は知りたくなんてなかったのに

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“………和也、話があるんだけど”

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忘れるはずない。貴方の、あんなに驚いた顔

当然よね。そんなことにはならないように、ちゃんと気を付けていたものね。

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“貴方以外考えられない。他に可能性なんて……ない”

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だけどそれ以上、追及してくるような人じゃないってことも知っていた。

そんなことして私を傷付けるような真似、優しい貴方にはできない

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和也『わかった……責任はとるよ』

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絶対に渡さない

貴方を奪われるぐらいならどんな悪い女にもなれる

たとえその嘘で貴方を傷付けてしまっても

一生かけて隣で償う

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―――そうよ。私は、ここに来る前から覚悟を決めていたの。

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文乃「死んでも離すもんかっ…」

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ぐっと、戻しそうになっていたものを飲み込んで

力を振り絞って立ち上がる。

ぽつんと一人残って、燃え落ちた銀杏を見つめる

和也のところへ、駆けていく。

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もう二度とごめんだわ

あの後悔を再び味わうのは

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