七。 ページ8
「そう云えば、貴方って……」
思い出した様に口を開くA。
因みに、今は部屋に二人だけ。
太宰の膝の上にAが乗り、Aの膝の上には、分厚い本が乗っている。
今は、二人で此の本を読んでいた様だ。
端から見れば、二人は兄妹の様に見えるだろう。
「貴方以外に、呼び方はないのかい？」
太宰は下を向いて訊き、Aは顎に手を添えて、考える素振りを見せる。
「……太宰？」
「……うん、まぁ、佳いよ」
渋々、と云った様子で、太宰は首肯く。
Aは顔を上げて、何時もの無表情を向けた。
「其の反応、苛つく」
「苛ついた様に見えないけど？」
「それで、」
「無視かい？」
「何で包帯だらけなの？」
太宰はキョトンとし、苦笑いを浮かべる。
そんな太宰を気に止めず、繋いだ手の袖を捲る。
其の腕には、矢張り包帯がぐるぐると巻かれてあった。
「何度も自 殺未遂して、躰が傷だらけだから」
「……自 殺？ 何故？」
Aは太宰に目を向ける。
普段より目を開き、其の声は普段より少しだけ高い。
驚いているが、其れは何処か嬉しそうな様子だった。
何時もは、実年齢より少し上の様にも思えるが、今は実年齢相応の調子にも思える。
そんなAを気にぜず、または気付かずに、太宰は答える。
「詰まらないから」
「……若しかして、世界が？」
「うん」
そう答えたAは、「そう……」とだけ云った。
其の顔は、とても嬉しそうに笑っていた。
「他に理由は？ あるでしょ？」
「……生きる意味が判らないから」
「そう、……有り難う」
満面の笑みで御礼を述べる。
其の笑みは、外見の年齢相応の、無邪気さ其のものだった。
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作者名：日之静海 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年9月13日 21時
