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五。 ページ6

「森さんッ!」

突如、リンタロウ__基、森を呼ぶ声が建物に響く。
森は冷静さを保った儘、声のした方へ向かう。

エリスも「Aは此処に居てね」と云って、森に付いて行った。

「……」

一人部屋に残され、Aは戸惑う。
やる事がないのだ。

Aは寝台に座り、辺りを見回す。
しかし、暇を潰せそうな物はない。

__扉には、Aとって見知らぬ者は居たが。

「やァ」

「……こんにちは」

扉に立っていたのは、15歳程の小柄な少年であった。
大き過ぎる黒背広を羽織っている。

「……誰?」

「私?私は太宰治だよ。君は?」

部屋に入り乍ら、太宰と名乗る少年はAに訊ねる。
部屋に入る太宰を見ながら、目を少し細めて、Aは口を開く。

「……A」

急に現れた彼に、Aは少し警戒している様だ。

「Aちゃん、か……」

太宰はニコリと微笑むと、Aの隣に座った。
対してAは嫌そうに顔を歪めるが、隣に座られる事に対してではない様だ。

「……貴方、年齢は?」

「……14だけど?」

太宰がキョトンとした様子で答える。
Aはより顔を歪めた。

「じゃあ、ちゃんと呼ばないで」

「森さんは佳いのに?」

Aは首肯くと、口を開いた。
其れは、此処に来てから、一番の長く話した。

「リンタロウは歳上だから佳い。貴方は同齢だから、ちゃん付けされたくない」

「……は?」

太宰はより一層、キョトンとした顔を浮かべた。
確かに、其れは当たり前の事だ。

確認しよう。
太宰は14歳と云った。
では、Aの見た目は__。

「__6歳位じゃあないのかい?」

「7歳から成長できていないと知ったから、そう見えるのも当然。けど、私は14歳」

扉から、物音がした。
二人揃って其方に視線を送る。

扉に立って居たのは、森だった。

「やァ、太宰君。来ていたのかね?」

「うん」

太宰は首肯くと、先刻から変わらない表情で、森に云う。

「ねぇ、聞いた?僕と同齢だって」

「聞いたよ。驚きだねぇ」

大して驚いた様子でもなく、二人はそんな言葉を交わす。
其の二人を、Aは何時の間にか戻った無表情で、唯眺めていた。

六。→←四。



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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年9月13日 21時

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