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二十六。 ページ29

__バァン……_。

乾いた銃声が辺りに薄く響く。
そして、自動的に弾丸が装填される。

撃った弾は、崩れた建物の瓦礫に隠れて、逃げようとする敵に中る。

其の様子を太宰は双眼鏡から、瑞香はスコープから見ていた。

太宰が双眼鏡を下ろし、瑞香へと視線を向ける。
と云うよりは、瑞香の使う自動狙撃銃を見ている。

「……自動装填(オートマチック)方式の狙撃銃だね。確か射撃場では、手動のを使っていたと思うのだけど?」

太宰が疑問を投げ掛ける。
しかし瑞香はスコープから目を離さず、同じ姿勢を保った儘答えた。

「武器庫に置いてあった中で、此れが一番性能が善い」

「銃は何でも善いのかい?」

「うん」

瑞香が再び一発撃つ。
今度は、敵の狙撃主(スナイパー)に中った様だった。

太宰は再び双眼鏡を覗く。

「あ、中也。君から見て右に在る、そこそこ大きい瓦礫を壊して」

『あ゛?』

無線機から中原の声が聞こえる。

現場に居る中原は、殴り掛かってきた者に回し蹴りを喰らわす。
そして、太宰の云われた通りに、大きな瓦礫を飛び蹴りで壊した。
其の直後に、バク転をして後ろに下がる。

中原が其の場から少し動いた瞬間、弾丸が一発通り過ぎた。
中原が死角になって見えなかった狙撃主が、瑞香の撃った弾に中って倒れた。

「察してくれて有り難う」

スコープを覗いた儘、瑞香は中原に礼を述べる。

「今ので数人潰れたねぇ」

太宰が愉快そうな口調で云った。
しかし、中原の方は疲労が見られる。

対して敵は、未だ何十と居た。

「太宰」

「うん、宜しく」

短く会話を交わすと、瑞香は銃の向きを勢い佳く変える。
そして一拍置いて、弾丸が放たれる。

弾丸は、遠くから走って来ていた車に中る。
後ろから続く車は、其の車にぶつかる。
大きな爆発が起きた。

瑞香は其の様子を確認する前に、反対方向に向きを変えた。
其方でも、同じ事が起こる。

「おぉ……」

太宰が感嘆の声を上げ、小さく拍手をした。

『おいッ!』

突如、中原の声が聞こえる。
其の声はとても大きく、瑞香は耳を手で被った。
実際、無線機は着けた儘なので、大して意味を成さない。

「……何、中也?」

太宰が不機嫌な声を出す。

『何、じゃねェ! ……此の儘だと埒がっ、……明かねェだろ。どうする?』

確かに、中原の云う通り、敵は減ってはいたが、其の穴を埋める様に増え続けていた。
此の儘では、無限(エンドレス)に続くのだった。

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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年9月13日 21時

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