二十二。 ページ25
「__以上が、夢野久作__Qの異能力についての報告です」
マフィア首領部屋では、太宰と瑞香が、以前任されていた任務の報告を行っていた。
「厄介な異能力だねぇ……」
森は報告書を眺め、顎に手を当て、考えて込んでいた。
しかし、軈て報告書から手を離すと、執務机の端に置かれていた別の資料を手に取る。
「まぁ、一度様子見だね。……次の任務だよ」
「拝見します」
差し出された資料を太宰が受け取り、瑞香も背伸びをして見ようとする。
しかし其れでも見えず、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
太宰は其の一連の行動に、小さく笑いを溢す。
そしてしゃがみ、瑞香にも見易い様にした。
また森も、一連の様子を微笑ましげに笑っていた。
「……見ての通り、次の任務は」
「裏切り組織の排除……?」
「そうだ。先代が横死されてから、先代派と私派で分かれた。先代派の中には、不満からの裏切り行為に出る者も増えてね……否ァ、困った事だよ」
森は苦笑を溢し、頬杖をつく。
しかし、其の雰囲気は張り積めたもので、森から放たれていた。
「此の組織、規模が中々大きい……嗚呼、成る程」
「見せしめ、ですね?」
「二人とも正解」
森がパチンと指を鳴らす。
其れと同時に、二人の背後の扉が開かれた。
「失礼します、首領」
そう云って、一人の少年が入ってくる。
しかし、二人に__否、詳しくは其の内の一人に気付くと、足を止めた。
「「げっ」」
其処に立っていたのは、
「あ、中原」
中原中也だった。
中原はげんなりとした顔を戻し、瑞香を見る。
「よォ、瑞香」
「うん、久しぶり」
にこりと笑い、瑞香は挨拶を返す。
「……で、何で青鯖が此処に……」
「全くだよ、何故蛞蝓が此処に居るのだい?」
「あァ?! 誰が蛞蝓だ!?」
「五月蠅い」
何時もの様に云い合いが始まりそうになり、瑞香は文句を述べる。
しかし森の方は、笑いを浮かべた儘で、止める事はなかった。
「中也君を喚んだのは私だよ。次の任務、三人に請けて貰おうと思ってね」
「「____ッ!」」
森がそう云った途端、二人はまた何かを云おうとした。
しかし瑞香は其の前に、太宰の手を強く握り、中原に対しては
器用な動きである。
「だから、喧嘩しない」
中原は軽く突かれた部分を押え、瑞香を軽く睨む。
「何か、太宰との攻撃の差が激しくねェか?」
代わりに太宰が答える。
「否、そんなことな、待って、痛っ、つぼ押さないでっ」
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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年9月13日 21時