一。 ページ1
其処は、とある路地裏。
絶え間無く降り続く雨に打たれながら、一人の少女が凍えていた。
少女の見た目は、6歳程。
細く傷だらけの躰には、薄汚れ、所々切り裂かれた服を纏っていた。
側には、刃が欠けたナイフ。
__パシャ、パシャ。
水溜まりを歩く音が聞こえ、少女は肩を跳ねさせる。
しかし、直ぐにまた、力を抜いた。
其の様子は、諦めたかの様だ。
不意に、水溜まりを歩く音が止まる。
「__おや、君は……」
少女はゆっくりと顔を上げる。
濃いけれど薄い茶髪から覗く、紅の目は光が差していなかった。
所謂、絶望。
望む事も、願う事も、忘れた目だった。
「……ねぇ貴女、名前は?」
自分が差していた傘を傾けて、其の少女を雨から防ぐ。
名前を訊ねた金髪蒼眼の少女と男は、優しく口に弧を描いて、微笑んでいた。
「山田、A……だった」
「だった?」
「……捨てられたから。山田じゃない」
其れだけ云うと、Aは再び顔を下げる。
力が入らない様だ。
男は次に、ナイフに目を向ける。
「其のナイフは?」
「……生きる為に……。けど、もう……」
疲れた、とでも云う様に、声が小さくなっていく。
男はそんなAを見て、「私の元へ来るかい?」と訊ねる。
Aは何も答えず、何もしない。
どっちでも佳い様だ。
「ねぇ、リンタロウ。私、Aを連れて行きたいわ!」
リンタロウと呼んだ人に向けて、金髪蒼眼の少女は云う。
リンタロウは「エリスちゃんの頼みだからね」と云って、Aに手を差し伸べる。
「……行こうか」
「行きましょ!」
Aは手を取ろうと、手を伸ばす。
しかし、力が出ない様だ。
其れを見兼ねたのか、エリスと呼ばれた少女は、Aの手を取る。
そしてAは立とうとするが、足にも力が入らない様で、エリスに引っ張って貰った。
「……ごめん、なさい」
「其の様子だと、歩けないね。……っと」
リンタロウは、Aを抱えると、其の儘歩き出す。
「服、濡れちゃいます」
「気にしないでくれ給え」
暫くして、とある建物に着いた。
其処でAをタオルでくるめると、御風呂に勧めた。
Aがエリスと共に御風呂に入る。
そして出ると、寝台に寝かし付けられる。
隣にはエリスが居る。
「先ずは休み給え。……御休み」
そしてAは、眠りに付いた。
__
未だ首領交代前ですから。
……一寸難しいです。
舞台とか、移動とか。
此れから宜しくお願いします。
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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年9月13日 21時