鵺は今宵も哀しく鳴く２

八十二 ページ41

「悪ぃ。鵺鳥、全てが片付いたらどんな罰でも受ける。だが、こいつだけは助けても良いか？」



真剣な瞳で訴えかけてくる岩泉さんの色は、複雑だけれど、硬い意思を感じた。



私だって、彼女の手を掴もうとしたのだから、当然良いですよと言おうとしたとき



『いいでsムグッ！』



「おいィ、Aは優しいから良いと言うと思うけどなァ、お前はそいつがAにした分の責任も、全て取る覚悟だろうなァ」



切り傷のある大きな手が、私の口を包んだ。



『ひはふ！はらはふはひふは(師範！離してください)』



「そいつを助けるってこたァ、こいつの罪をチャラにするってことだろォ？その分、お前が罪を背負わなきゃァ、Aが救われないィ」



「勿論！たとえこの先バレーが出来なくなっても、俺はこいつを・・・西条を助けたい」



『助けてあげて下さい！』



師範の手をもぎ取って、そのまま勢いで声を出したら、クソデカボイスになったが気にしない気にしない。



『でも、少し条件があります。最初に一対一で私と話させて下さい』



「・・・なにするんだ」



『ある意味、西条さんの本当の姿を一番見てきたのは私です。私となら、本音をぶつけられるかもしれない』



今、青城の誰かと話しても、本音は聞き出せない。私は西条さんの本音が聞きたかった。

八十三→←八十一

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す