銀狼【銀魂】21

第九百三十九訓 呪い ページ8

フッと自嘲の笑みを見せると、神威は笑顔を消してあたしを見つめ返していた。


そうだよ、逃げてたまるかよ。

覚悟を改めて決め直したあたしは、しゃがんで檻の中に手を伸ばした。

神威の手を掴み、もう片方の手で懐から赤い紐を取り出す。
吉原での戦いで、真っ二つに切られた古ぼけた髪紐。あたしのお守りだったもの。

その髪紐を神威の右手に巻きつけ、キュッと硬く結んだ。


A「あたしのお守り、お前にやるよ。強力な呪いがかかってるから、そう簡単に切れやしねー。もしあんたに未来があるのなら、また会おうぜ」

神威「……A」


今まで黙っていた神威が口を開き、あたしの手を引く。鉄格子に額をぶつけるほどお互いに顔を近づけた。


神威「さっきはああ言ったけど、俺はAのこと、そこまでだと思ってないよ」

A「は？」

神威「もっと高尚なものってことさ。お前には確かに獣の血が通っている。でも、それを活かしながらさらにお前を高尚なものに叩き上げたんだ」

A「……」

神威「まぁ要するに、泣かないでってこと」

A「！！」


泣…あたしが？

ニコ、と笑った神威は、一度強く手を握ってから離した。

心を見透かされたように驚いて神威を見つめたが、フッと微笑み立ち上がり、その場を後にした。


うるさいな。お前に言われるまでもないよ。
目尻を擦ると、水っぽいのが指についた。


＊＊＊＊＊＊＊＊


三日後。久々に入った資料室には、眠る前の状態がそのまま残っていた。

一つ無いものといえば、神威に飲まされた催眠薬入りのカフェオレだけ。あの後回収されたんだろう。


椅子を引いて、パソコンを立ち上げる。

その時、ふと画面の端に見覚えのないアイコンがあった。


A「？何これ。No.54？何の？」


意味不明な題名に興味を抱き、クリックする。

ファイルは案外あっさり開き、その中にはある報告書が残っていた。

PDFファイルになっているそれをクリックすると…


A「！！なっ…」


報告書、という文字のすぐ下にある、二枚の写真。
そこには、杉浦と銀髪の男が並んでいた。

写真の下には説明付が加わっていて、杉浦の写真には杉浦大輔、と書かれている。

肝心の銀髪の男の名前は…







A「…霧島…刹、乃……！？」


あまりの衝撃に、驚きを隠せない。
報告書を下へとスクロールして、内容を読んだ。

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