第八百六十七訓 恋する乙女は可愛らしい時とそうでない時がある ページ31
だって包丁なんてさ、短い刀と一緒じゃん。扱い同じでしょ?
なら任せて、あたしは生まれた時から刀とは共にあった。
チョコを細かく刻んで、それから湯煎にかけて…
A「師匠ーこれどうすればいいの?」
新八「ああ、えっとね。次はーー」
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A「でっ……できたァァァァ!!」
達成感のままに大声を上げる。
今回作ったチョコは市販の板チョコを溶かして固めただけの簡単なものらしい。
しかし、料理なんて一切やらないあたしにとっては偉業を成し遂げたくらいに感じられた。
新八「うん、よくできてるじゃないか。じゃ、これをラッピングして完成だね」
A「本当にありがとう師匠!!あ、お礼に一個食べていいよ!」
新八「えっ、本当!?ありがとうAちゃん!!」
な、なんか師匠の喜びようがすごいんだけど…
あ…そっか。師匠の周りにはチョコくれるような人いないもんね。
もらったとしてもダークマターだもんね。
A「ふふっ、トッキー喜ぶかなぁ」
新八「きっと喜んでくれるよ。好きな女の子が自分のために作ってくれたんだもん」
A「そうかな、そうかなぁ?うふふっ!」
期待に胸を膨らませるあたしの姿は、まさしく恋する乙女だ。
今似合わねえって思った奴は飛び膝蹴りな。確実に当ててやるから覚悟しろや。
********
そして迎えた、バレンタイン当日。
真選組のバイト中にも関わらず、あたしはルンルン気分だった。
しかし、とある通報により、その気持ちは一瞬で冷めることとなる。
A「ーーはぁ?バレンタインのチョコが次々盗まれたァ?」
顔をしかめると、「ああ」と短く答えたトシ兄ィはさらに説明を続けた。
土方「近頃、バレンタインに向けて女共が買ったり作ったりしたチョコが盗まれる事件が多発してな。犯人は怪盗『リア充爆発しろ』とかいうふざけた名前の奴らしいが、被害の数は相当なのが現実だ」
A「うわ、何その恥ずかしい名前」
リア充爆発しろとか私怨たっぷりじゃん。お前が爆発しろ。頭を。
土方「ついでに言うとお前の師匠んとこにも出たらしくてな。今から近藤さん回収ついでに事情聴取に行くぞ」
A「了解ー」
おどけて敬礼ポーズをとってから、あたしはトシ兄ィと共に車に乗り込み、志村宅へ向かった。
第八百六十八訓 乙女の怒りは紅蓮そのもの→←第八百六十六訓 バレンタインはリア充が一番ウザい形で盛り上がる日
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作者名:ミサ | 作成日時:2018年6月2日 23時