第八百六十六訓 バレンタインはリア充が一番ウザい形で盛り上がる日 ページ30
バレンタイン。その一週間前、あたしはある人物の家に赴いていた。
新八「今日の稽古はここまで」
A「ありがとうございました!」
そう、師匠の家である。
いつものように剣の稽古をつけてもらったあたしは、道場の掃除をささっと終える。
そして、師匠の前に直立した。
A「あ…あの、師匠」
新八「ん?」
師匠は首を傾げてあたしを見下ろす。
うう、こう改まってお願いするとなると、すっごく恥ずかしいなコレ。
気持ちを紛らわそうと、指先で胴着の袂をいじいじと触る。
新八「どうしたの?Aちゃん」
A「ぁ…あの…その…お、お願いがあるんですけど…」
新八「稽古終わったんだから、敬語なんていいよ」
あたしの緊張を解かせようと、優しい声音で言ってくれる。
意を決したあたしは、目を瞑って叫んだ。
A「お願いしますっ!あたしに料理を教えてください!」
新八「…えっ?」
********
冒頭にも言った通り、もうすぐバレンタイン。
だから、彼氏のトッキーに手作りチョコを贈りたい。
それまではトッキーが毎年勝手に作ってプレゼントしてくれたんだけど、今年は今までと違う。
バレンタインは女から好きな男にチョコを渡すものだから、今年はあたしがトッキーにチョコを渡したいと思った。
でもあたし自身は料理ができないし、したことがない。
新八「それで、教えてほしいと…」
師匠が話をまとめると、うんうんと頷く。
新八「わかった。僕でよければ教えるよ」
A「ほ、本当!?ありがとう師匠!!」
あたしと師匠は早速台所へ向かった。
********
新八「わぁぁぁぁ!!Aちゃん危ない!!」
A「へ?」
師匠の絶叫が台所に響き渡る。
ダン!という大きい音と共に、あたしは板チョコを切った。
すぐに師匠の指導が入る。
新八「包丁使う時左手は猫の手にするって言ったでしょ!?」
A「ん?あ、そうだった」
新八「もう、気をつけてよ…どんだけヒヤヒヤしたか。Aちゃんも刃物持ってるなら、もうちょっと緊張感持って」
A「いや、こんなの刀に比べたらそこまで長くねーし大丈夫かなって」
新八「刀と一緒にするなァァ!!いや、確かにAちゃんにとっては慣れ親しんでるだろうけども!!それとこれとは別だからね!!わかった!?」
A「はーい」
第八百六十七訓 恋する乙女は可愛らしい時とそうでない時がある→←第八百六十五訓 構ってちゃんは嫌われる
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ミサ | 作成日時:2018年6月2日 23時