銀狼【銀魂】19 (ページ14)

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第八百五十訓猫は気まぐれページ14

どれだけ叫んで訴えても、トッキーには届かない。

それもそうだ。今の自分は猫で、喋れるわけがないのだから。

とにかく、どうにかしないと。

何とかして、人間に戻る方法を探さなくちゃ。

しかし、今の自分は喋れないし、相談するにしてもそれをできる相手もいない。

…あ、定春って猫の言葉通じるかな？

よっし！そうと決まれば！

取り敢えずあたしはトッキーの手の中を抜け出す。

窓から飛び降りて、一抹の期待を込めて定春のいる銀の家へと向かった。

＊＊＊＊＊＊＊＊

猫の足で歩くとかなり遠かった、銀の家。

その一階にあるスナックお登勢がいつもより大きく見えて、あたしは大きな溜息を吐いた。

階段を一段一段しっかり登り、扉の前に座り込んだ。

ハァ…これで何とかなればいいけど…

カリカリと前足で軽く扉を引っ掻く。

跡なんて残ったら銀に怒られるかなぁ…なんて考えながら、懸命に前足を動かした。

…ダメだ。開かない。

何度引っ掻いても、誰か気づく気配は感じられない。

そもそも、家の中は空っぽのようだ。

今日に限って仕事が入るとは…なんというバッドタイミング。

溜息を吐いて、ぺたんとへたり込んだ。

気晴らしに屋根の上によじ登り、空を見上げる。

いつにも増して、空が遠く感じた。自分が猫になってしまったからだろう。

あー…これからどうしよう。

気持ちの良い日光が当たり、眠くなる。

猫はお昼寝が好きとはよく言ったもんだ。

このまま眠れば、とても気持ち良くなるのに。

でも、どうせ寝るなら自分の布団か屯所の縁側がいいなぁ…

…あれ？後者は猫もやること？あたし猫だったの？

ぐでーっと屋根の上で寝転がっていると、ズルズルと体が下に落ちていくような感覚がした。

って、感覚がじゃなくてガチで落ちてるぅぅぅぅ！！

ぎゃあああああああああ！！

屋根から看板、一階の屋根、看板へと体を打ち付け…

最後にズベシャッ！と地面にダイブする。

ああ…最悪だ。恥ずかしい。

痛む体を起こし、プルプルと顔を振って土を飛ばした。

ガラッ

お登勢「一体何だぃ？何か落ちてきて…」

スナックお登勢の扉が開き、中からバーさんが現れる。

先程落下した時に屋根に体を強打したせいで、店内にも響いたのだろう。

キョロキョロと辺りを見渡してから、バーさんはこちらへ視線を落とした。