第八百四十九訓 超常現象はふとした瞬間に起こる ページ13
窓から差す光に、あたしは目を覚ます。
ゴシゴシと目を擦ろうと手を挙げるとその手が毛むくじゃらになっていた。
ーー……は?
寝ぼけていた視界が一気にクリアになった。
目の前には猫の手。孫の手じゃないよ。猫の手だよ。
部屋に置いてある大きな鏡を見ると、そこにあるのはいつもの少女の姿ではなく、白い毛の子猫。
……ええええええええええええっ!?
ま、ま、まままま待て待て待て待て。
あたしは狼狽を何とか抑えようと、深呼吸する。
一旦落ち着いて鏡を見てみても、映るのは先程と同じ子猫の姿。
うおあああああああああああ!!
再び混乱に陥り、布団の中をジタバタジタバタ。
畳には自分のパジャマが散乱していて、それに構わずのたうちまわる。
突然のことに、思考が追いついてこない。
待って何これ、一体どういうことだってばよ。
ってちょっと待って、コレもしかしてあたし戻ったら裸!?ウソ、嘘でしょ!?
ていうかあたし戻れるの!?何これ一体どうすればいいの!?
トントン
部屋の襖が、外から軽く叩かれる。
続いて、愛しのトッキーの声が聞こえてきた。
時雪「A、朝だよ。早くしないとバイト遅れちゃうよ」
一気に脳が落ち着き、代わりにどんどん冷や汗が出てくる。
ゴメン、今バイトとかそんなのどうでもいいんだ。
どうしよう。これバレたらどうなるの!?
時雪「A?」
返事を返さなかったのが不審に思われ、チラ、と小さく襖が開く。
もしタイミング悪く着替えたりしていたら申し訳ない…というトッキーなりの配慮だろう。
嬉しいと言えば嬉しいが、あたしの裸に興味0かと思うと、何だか複雑な気持ちになる。
お前それでもあたしの惚れた男か。
まぁ、そんな優しいところも好きなんだけどね!
しかし、あたしの姿が見えないと判断するや否や、すぐに襖を開けた。
時雪「A?どこ?…え?」
キョロキョロと部屋を見回してから、足元に近寄る猫に目がいった。
A「ニャー!ニャー、ニャー!(トッキー!あたしだ、あたしだよ!)」
時雪「猫…?どうしてこんな所に…」
トッキーは不思議そうに腰を屈めて、
あたしは前足をジタバタさせて必死に鳴いた。
A「ニャー!ニャーニャー!!ニャアーオー!!(あたしだって!霧島Aだってば!!気づいてよー!!)」
時雪「す、すごいよく鳴く猫だなぁ…」
ダメだ、喋ろうとしても鳴き声にしかならない!
第八百五十訓 猫は気まぐれ→←第八百四十八訓 鈍感は好きになる方にとってかなり酷
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作者名:ミサ | 作成日時:2018年6月2日 23時