銀狼【銀魂】10

【番外編18】義兄の思うところ その1 ページ48

今から12年前。俺に妹が産まれた。

正直言って、赤ん坊を見るのは初めてだった。ひとしきり泣き喚いてから、落ち着いて眠る。

そんな生き物を見るのは初めてで、俺は戸惑うことしかできなかった。

でも、こいつは俺達に頼らないと何もできないひ弱なガキで。俺達が支えてやらないと、すぐに折れてしまうほどか弱い妹だ。

だからだろうか。こいつを護りたい、と強く思った。


俺達三人の中で、一番最初に懐いてくれたのは俺だった。

見た目の特徴も似ているからか、妹は俺の後ろをちょこちょこ歩いてひっついてきた。


こんな事言うのもガラじゃないが、可愛くてしゃーねェ。

俺の着流しの袖をぎゅっと掴んで、上目遣いで見上げてきて、にこりと笑われたら最後。

俺の心臓はブチ抜かれる。


やがてそいつが曖昧だが喋れるようになると、俺達は全員こぞって名前を覚えさせようとした。


特に父親(親バカ)のゴリ押しがすごくて、泣いたりすることもあった。

そうしたら、そいつはいつもの余裕はどこへやら、オロオロして娘を宥める。

俺でさえ未だに勝てないあの男が、娘の涙でここまで翻弄される。

娘ってのは、妹ってのは末恐ろしい奴だと実感した。


そしてその妹は今。

俺の隣で父親より長くなった髪を揺らして、楽しげに笑っている。

父親のことも母親のことも覚えているのかはわからないが…それでも。


A「ねぇ聞いてる？銀ってば。あそこの角の団子屋さん、とっても美味しいんだよ！食べに行こうよ！」

銀時「ハイハイ、わかったから引っ張んな」


こいつが幸せなら、それでいいか。

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