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○別に元々それを振ったのはこちら側で、彼女がそう言葉を返すのも至極自然な流れなのに。途端に謙虚な態度になる彼女にゾムは内心クスリと笑った。
ええな、俺もＰＴ５でエンデルやってみたい。特に気にしてない雰囲気を出しつつも正直な気持ちを吐露した彼は持ってきたペットボトルの蓋を開けて中身を呷った。十二分に冷えた液体を嚥下している間、彼女からの反応は返ってこない。
急に静かになった彼女にゾムは蓋を閉めながら首を傾げた。席から立ったような物音もしなかったのでおそらく其処にいると思うのだが。確認の為彼女の名前を呼ぼうと口を開いた次の瞬間、彼女の声にそれは遮られてしまった。
「あの、も、もし良かったらなんだけど……うちに、来る？」
「…………へっ？」
思いがけないその言葉に彼の口から何とも間抜けな声が出た。
✳︎✳︎✳︎
——次は、
普段殆ど降りることの無い駅の為、その名前に特に関心を持つことなく右から左へと聞き流していた。けれど今日はそれを聞いた瞬間、ゾムの心拍数が少しだけ早くなった。
減速していく電車。ドアの前に立つ。停車をして一拍置いてから開くそれの向こうから湿気に満ちた空気が流れ込んでくる。ゾムはそれに思わず眉を顰めながら電車から降りた。
早速空調が効いた心地良い室内が恋しくなる。早くこの熱気から逃げたいと思いながらホームを見回し、自分と同じく電車から降りた人々の流れを見てそちらへと足を進める。
へえこんな景色なんや。改札口が一つで助かった、なんて普段微塵も思わないことを胸中で呟く。しかしそうしなければ変な意識をしてしまいそうで落ち着かないのだ。
別にやましいことをしに行く訳ではないのだから緊張なんてするな阿呆。ゾムはそう自分に言い聞かせる。
そうしてる間に遠くの方に改札口を見つけた。徐々に近付いていきながら目的の影を探してみる。
すると改札口の外、柱を背にしているある人影が不意に顔を上げたのが見えた。その動きに視線を取られると相手の目と合う。その瞬間、あっ、とゾムは僅かに目を大きくした。
その人物も気付いたような表情をした後、頬を柔らかく緩めて小さく控えめに手を振る。そして改札を通った彼の下へと歩いていった。
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抹茶ちよこ(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます！面白いと言って頂けてとても嬉しいです！これからもどうぞ温かい目で見てやって下さい。ありがとうございます！ (2022年4月17日 12時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うわぁ〜〜！！本当に面白いです！！まさかのライバル？！誰なんだ…続きも楽しみにしてます！ (2022年4月15日 0時) (レス) @page39 id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2022年3月14日 15時
