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彼のその提案にAは快く了承した。
 先程から何戦かしてみたがあまり順位を上げられず、段々とミスが増えて判断が鈍ったり銃も当たらなくなっていた。連戦続きで集中力が切れてきたのだろう。休憩してリフレッシュすべきだと彼女も思っていた所だった。
 モニターの表示をゲームの待機ロビーにして二人はマウスとキーボードから手を離す。
 Aが両手を組んだ腕をぐっと天井に突き上げているとヘッドフォンから「飲み物取ってくるわ」と彼の声が流れてきた。はーい、と間伸びした声でそれに答えると同時に彼が席を立った物音がした。
 
 その後休憩にしたはいいが特に終了時間も決めず、かつ時間が有り余っていると言うことで雑談に花を咲かせる二人。宿題面倒い、お盆どっか行くのか、あいつらと今こんなゲームをやってるんだ、次に誰を誘ってヴァーテをやろうか、そう言えばあのゲームの新作出るらしいって。
 次から次へと湧いて出る話題が楽しくて、段々と休憩の時間が伸びる。もうとっくに気持ちも切り替わって、先程の負けた悔しさも落ち込んだ気分も無くなっていると言うのに。なかなか二人はゲームを再開しない。
 
 その時、ゾムは以前から気になっていたことをふと思い出した。
 
 
「せや。なあ、エンデルバングルってやってる?」
「エンデル? ああ、うん。うちのお父さんが買ったから私もやってるよ」
「マジか。え、PC版?」
「えっと……ぴ、PT5、です」
「えっ⁉︎ も、もも、持ってるんか⁉︎」
 
 ゾムの耳にヘッドフォン越しで彼女がうん、と控えめに頷いたのが聞こえた。
 お父さんが何回も抽選に応募してやっと当てたんだ。笑ってそう言う彼女にゾムは、はえー、と思わず感嘆な声を上げた。
 彼女の父親も無類のゲーム好きで、仕事が忙しくなかなかプレイ出来ない故に寝る間も惜しんでゲームをするくらいオタクらしい。だから寝不足で隈を作り大口で欠伸を掻いてはいつも母親に叱られていると彼女からそう聞いていた。
 衝撃な事実に驚きつつもゾムは彼女の境遇に少なからず羨ましい思いを抱いた。
 
「ゾム君は? エンデルやってるの?」
「いや、持ってへん。やりたいねんけど、ちょーっと今金銭面がなあ……」
「そ、そっか……」

 彼の返答にAの声音が途端に申し訳なさに染まる。おそらく自分が恵まれた部類にいることが分かり、後先考えず話題を振ったことに後悔しているのだろう。

34→←32:友達ですから



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作品ジャンル:恋愛
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抹茶ちよこ(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます!面白いと言って頂けてとても嬉しいです!これからもどうぞ温かい目で見てやって下さい。ありがとうございます! (2022年4月17日 12時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うわぁ〜〜!!本当に面白いです!!まさかのライバル?!誰なんだ…続きも楽しみにしてます! (2022年4月15日 0時) (レス) @page39 id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:抹茶ちよこ | 作成日時:2022年3月14日 15時

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