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○一方ゾムは軽く混乱していた。こんな見知らぬ男にこの少女は何故此処までするのか、と。助けてくれたり、怖がる様子もなく質問してきたり、あまつさえ食事を用意してくれるなんて。
ちらりと、ゾムは置かれたトレーに目を落とす。綺麗な三角形に真ん中に海苔が付いているそれは、空腹になっている彼にとってはとても魅惑的に見えた。しかも走り疲れて喉が渇いているので、水もまた然りだった。
だが本来なら、手をつけるべきでは無いことは重々理解している。ゾムは今一度彼女に視線を向ける。
無表情のそれは相変わらず意図を掴めないが、全く敵意も無ければ隙だらけ。そして先にも言ったように、何故かは知らないが追手から自分を助けてくれた。
今までの彼女の言動を見て、果たしてここで自分を毒殺するような行動をするだろうか。まあ、零では無い。が、可能性は低い。
きゅるる、とまた腹の虫が鳴く。腹が空いている所為か、考えるのが億劫になってきた。そもそも戦闘以外で頭を使うのは正直得意ではない。ああ、おにぎりが凄く美味しそうに見える。
葛藤の末、ゾムはその誘惑に負けた。
程良い大きさのそれを一つ手に取り、大きな口を開けてかぶりつく。温かい温度と米の感触、そしてこれまた程良い塩加減の味が口一杯に広がっていく。
「うま」
心が満たされて思わず声が漏れる。
それに気付いた少女が振り向き、彼が黙々とおにぎりを食べているのを見て、僅かにその目を大きくした。しばらく彼の姿を見続ける彼女の顔つきは心なしか安堵したように見えた。
ものの数分でおにぎりを平らげ、水を一気に飲み干し、トレーには空の皿とグラスだけが残された。彼の食いっぷりを見て、少女はもっとおにぎりを用意すれば良かった、と少しだけ後悔した。
勿論大食漢であるゾムがこれだけで満腹になるはずはなく、程度としては小腹が満たされるぐらいだった。だが空腹のままより遥かにマシなのは間違いない。冷たかった水も渇いた喉を通り、体の内部に染み渡っていく感覚が何とも気持ち良かった。
ゾムが生き返る心地に包まれている中、少女は用済みとなったトレーを下げようと再び彼に近寄る。トレーを手に取り、いざ立ち上がろうとしたその瞬間、なあ、と彼の声が響いた。
「何で助けたん？」
顔を上げると長い前髪の合間から見える、陰が落とされた目と目が合った。
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抹茶ちよこ(プロフ) - コメントありがとうございます！嬉しいです！では是非読ませて頂きますね(^-^) (2021年10月29日 3時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
アンテール(プロフ) - こんな作品があったなんて…。驚きです。この作品、大好きです！(*^^*)良かったら私も書いてるのでいかがですか？自分の作品紹介してすいません。 (2021年10月27日 9時) (レス) @page40 id: 798525d29d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - はぁぶ。＠某戦争屋推しさん» コメントありがとうございます！まさかこちらの作品も見て下さったとは…！本当にありがとうございます(T-T)が、頑張ります…！ (2021年8月7日 4時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。＠某戦争屋推し - 二章が気になる……。短編集の方から来た人です！抹茶ちよこさんの表し方？が好きです。更新を心待ちにしてます！頑張って〜 (2021年8月5日 18時) (レス) id: 457f98608e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2021年5月21日 14時
