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○それを察したトントンは物珍しげな目をしながら驚いた。
✳︎✳︎✳︎
殺風景な部屋の中にはただただ沈黙だけが佇んでいた。
こじんまりとした室内を簡易的なシャンデリアが照らす。サイドベッドに置かれた安っぽい置き時計で一応時間は把握出来るが、窓が無いので日中なのか夜なのか分からない。
まるで地下牢のような部屋、扉の反対側の壁際に置かれているベッドの上に少女は横たわっていた。その目は何も無い白地の壁越しに虚空を見つめている。
自分を含む、あの家に居た女性達は皆、ここに連れてこられた。また買われたんだ、と瞬時に悟った。
あの一軒家に連れてこられて初めて外に出された時は驚いたが、同時に死ぬ覚悟もした。結局それは杞憂に終わったが、地獄から解放されたわけではない。場所が変わっても、強要されることは何も変わっていない。
以前と違うのは行動が大幅に制限されたことくらい。基本この地下部屋に入れられた女性達は一階に上がることを禁じられ、必要以上の部屋の出入りも禁止、ほぼ四六時中当てがわれた部屋に居ることを義務付けられている。その点だけは以前の場所の方がまだマシだったと思えた。
だが、もうきっとあそこには戻れない。
前々からそれが分かっていれば、もしかしたらあの人に別れを告げられたかもしれない。そうすればこんな後悔の念を抱くこともなかったのに。
ここに来てから、少女の頭の中には常にゾムの姿があった。
たった数回、数時間だけだが一緒に居た時に見せてくれた彼の表情や仕草。あの場所で唯一自分にまともに接してくれて、人間として扱ってくれた人物。頭を撫でてくれたあの温もりを今も鮮明に覚えている。
少女はあんな形で最後になったことを少なからず心残りにしていた。せめて彼の安否だけでも分かれば良かったのに。そしたら今も心配で、こんな苦しい思いをしていなかったと思う。まあ、また彼に会える保証なんて何処にもないが。
もし生きていたとしても、もう会えることはきっとないのだろう。悲しい。
そう思うと胸の奥から熱がじわりと込み上げてきて、目頭が熱くなる。だがその熱を零すまいと、少女はグッと唇を噛み締める。
これから二度と会えないのだ。いつまでも思い出に浸っていても、ただ辛いだけだ。
この思いも脳裏に焼き付いている彼の姿も、きっといつか時間が消し去ってくれることを少女は密かに願った。
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抹茶ちよこ(プロフ) - コメントありがとうございます！嬉しいです！では是非読ませて頂きますね(^-^) (2021年10月29日 3時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
アンテール(プロフ) - こんな作品があったなんて…。驚きです。この作品、大好きです！(*^^*)良かったら私も書いてるのでいかがですか？自分の作品紹介してすいません。 (2021年10月27日 9時) (レス) @page40 id: 798525d29d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - はぁぶ。＠某戦争屋推しさん» コメントありがとうございます！まさかこちらの作品も見て下さったとは…！本当にありがとうございます(T-T)が、頑張ります…！ (2021年8月7日 4時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。＠某戦争屋推し - 二章が気になる……。短編集の方から来た人です！抹茶ちよこさんの表し方？が好きです。更新を心待ちにしてます！頑張って〜 (2021年8月5日 18時) (レス) id: 457f98608e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2021年5月21日 14時
