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振り返ると、彼がいた。隣の席の彼。
『お、りやまくん』
「なに？名前、別に覚えなくていいよ」
織山くんは怒っていた。たぶん、わたしが適当に言ったからだ。こんなの、わたしのせいでしかない。
『ごめんなさいっ...』
瞬間的に頭を下げた。途端、織山くんがよくわかんない顔になる。
「...なに、俺が悪いみたいじゃん」
『そんな、わたしが悪いにきまってる、』
さっきの唇の赤い男の子が、ニヤニヤしながら修羅場？修羅場？と聞いている。おい、聞こえてるよ？
「はあ、興味ないならもう来ないで、踊る気ないんでしょ」
織山くんの冷たい視線がわたしに突き刺して、竜生はただただおろおろしている。
だけど、ごもっともだ。わたしはもうダンスをしたくない。踊ることは大好きなのに、トラウマになって、きっと、いやぜったいに動けない。なら、ダンス部に入る意味はない。
最悪だ。陽キャみたいな男子に囲まれて、前の学校より終わってる空気が流れてる。
「まあまあ、おり。いいじゃん、ちょっとでも見に来てくれたんだから」
その時、神様が現れた。
えくぼの浮き出たゆるい笑顔の神様は、部長さんみたいだった。だってみんな急に道開けたんだもん、絶対偉い人でしょ。
「どうしても、踊るつもりはない？黒ちゃん達が言ってた。転校生だよね？前の学校聞いたけど、超強豪校じゃん、」
神様は、もったいないよと付け足した。織山くんはつっけんどんな態度をとったままだ。真逆の二人は対比された両手みたいだった。
『えっと、はい、もう踊れないような気がして』
あれ、まずい、このひと絆される。初対面なのに、なぜかしゃべっても許されるような空気出さないで。するっと言葉が出てくるもんだから、わたしはかなり焦った。でも、神様は微笑んだままだった。
相変わらず十人十色(20人ぐらいいそうだけど)の視線がわたしを貫いているけれど、神様のお陰でずいぶんやわらかくなった。
神様はわたしに向き直ってもう一度必殺ほほえみをくれた、
「そっか...じゃあさ」
神様の提案に、わたしは息を呑んだ。
「マネージャーになってみない？」
というか、驚絶した。なんでそうなる？ここの人たちはみんな断られることを知らないのか？
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作者名：ミル | 作成日時：2022年8月5日 17時
