花の令嬢は平穏に生きたいのです。＃４

episode９ ページ9

愛莉には美味しいお菓子とたくさんのおもちゃがある。だから友達なんていなくても全然平気。


それに、おとぎ話のお姫様はいつも孤独だから。



運命が動いたのは小学校４年生の頃。



Aや晴に、出会った頃。



春の遠足で、公園に行ったの。


行った先は、森林公園でね、山の頂上まで30分、歩いて登ることになってた。


でも愛莉はお菓子の食べすぎで歩くのも苦しくなってて。


ヘリを使わずにわざわざ歩いて行くことに嫌気がさしてた。暑さもあったけど、帽子はかぶりたくないっていうプライドのせいで、日傘指しながら登ってたしね。


暑いし、苦しいし。


周りからのバカにする声は正直そこまで気にしてなかったけど、周りがスタスタ先に行っちゃうのに、取り残されてるのがすごく嫌だった。


遠足の列にどんどん乗り残されていって、


遠足なんて来なきゃよかった。２度と学校になんて行ってやるもんかって、そう思ってた時。



「ねぇ、あなたどうしたの？」


横に座り込んだのが、Aだった。


「…大丈夫？具合でも悪い？…ねぇ、聞こえてる？ほら捕まって？早くっ」


Aに差し出された手に、さっきの連中と同じ感情を抱いて。


「そんなな痩せっぽちに何ができんのよ。もっと鍛えてから来なさいよ！」

「…それまでここで寝てるつもり…？だったらもう少し痩せる努力しなさいよ…、」


「今デブって言ったわね?!」


「まぁそうね。言ったわよ。おデブちゃんっ？」


そう言ってまた前に歩き出したAに、愛莉は飛び乗って、

「潰してやる！」

そう息巻いてた。




Aと話したのはそれが初めてだった。

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