花の令嬢は平穏に生きたいのです。＃４

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申し訳ない、と心の中で謝りつつ、Aの胸元を確認すれば、やっぱりそこにペンダントチェーンはなかった。


そのかわり、というのもなんだけど、そこにあったのは赤く腫れた爪で引っ掻いた跡。


雨で滑って取れなかったのか、余程胸が痛かったのか…、これを見ただけで、自分まで痛くなってくる


「どこだ…、」


Aを自分の方に抱き寄せて、あたりを見回せば案外近くに落ちていた。水たまりの中に手を突っ込み、服で軽く拭いてからペンダントの中身を取り出す。


錠剤。


狭心症でいうニトロのようなもので、即効性のある薬。Aのこれは、狭心症な訳じゃない。


僕達からしたら、それよりもっと厄介だ。



口の中に薬を置けば、少しずつゆっくりだけど、Aの呼吸が落ち着いてきた。


そのかわり、身体が寒さに気づき始めたのか、かたかたと震えはじめた。


「ごめんね、A。来るのおそくなった」


着ていたジャケットを脱いで、Aに掛けてから膝裏と頭の下に手を滑り込ませて抱え上げる。



「…帰ろうか、A」




ざあっという音が、嫌に大きく感じる。



冷え切った体から、熱は伝わってこない。



それが、怖くてしょうがなかった

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