花の令嬢は平穏に生きたいのです。＃４

episode２５ ページ25

「 私は…っ、たくさん天馬に貰ってるのに…、釣り合わないよ、天馬に、私なんて…、何にもできない…そんな自分がつらい…っ」



何かを考えたわけじゃない。


ただただ、Aを抱きしめた、




「何もしてないなんて、言わないで」


「…ぇ…、」


「Aだけだったよ、僕には。母さんが死んだ日から、今までずっと。音には、この弱音を漏らすまいと、必死に強がって。Aだけだったよ。泣いていいよって、言ってくれたのは」

あのとき、Aの顔を見て、初めて泣いた。


Aがいたから、いまがある。


そう、本気で思っている。


「ずっと心にAがいて、助けられてるよ。だから…Aのことは僕が守る。絶対にだ。」


ぽろぽろと落ちる涙を指で拭ったら、やっと目が合った。


「だから…もうごめんなんて言わないで。もう絶対に、そんな不安になんてさせないから。そんなことを思うすきがないくらい、Aへの想いを伝え続けるから」


「…天馬」


「僕がそばにいてほしいのは、世界でただ一人。Aだけだから。」


「もうっ…ほんとに…泣かせないでよっ…」




「おい天馬！なにA泣かせてんだよ！」


「…っ、にぃ…？」



家の方からズカズカと大股で司さんがやってきた。


よほど、心配だったんだな…、


後ろから伊吹さんが追いかけるように走ってきた。



「おい天馬！なんでAが泣いてんだよ！おい……って、お前なんでそんなに冷たいんだよ」

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