花の令嬢は平穏に生きたいのです。＃４

episode１９ ページ19

「あら？愛莉、音は？」


向こうから何食わぬ顔で来た愛莉は、私の声なんて聞こえてなかったフリをして席についた


「なんだ、もう来てたなら食べたらよかったのに」


「音は？」


「冷めちゃったね？今新しいの作り直させるから」


「愛莉、音は？」


顔から笑が消えたと思えば、愛莉がこぼしたのはとんでもない言葉。


「…どっかいったよ？」


にっこり、心のこもってない笑顔で、愛莉はそう言った。

「愛莉、あなた…音に何したの…？」


「Aも晴も騙されてる」



だまされて、る？


私が？誰に…？



まさか愛莉は、音に騙されてるって


……そう言いたいの？


「馳天馬と晴、いいとこ取りしてるんだよ？しかも、馳天馬はAの婚約者…Aの婚約者奪おうとするような悪魔だよ？」


「愛莉、答えろ。江戸川に何した」


「こうでもしないと目を覚まさないでしょ？」



ぱちんっ



愛莉が指を鳴らしたのを合図に、カーテンが引かれ、証明が落ち、そして横のスクリーンに映像が投影された。


「…馳…、」


「嘘…なんで天馬が…？」



天馬と音が、抱き合ってる。



なにか…なにか感じてしまう。


でもこの感情は…ほんとに天馬への恋心？


天馬や音の裏切りに対する嫌な気持ち？


そんなんじゃない


もっともっと複雑な……、


「あははっ…、ふたりきりにしたらもうこれよ？」


「…ほらね？晴が入り込めるとこなんてないの。Aのことも、騙して騙して」


「…………………愛莉、２人はどこにいるの」



気がついたら口にしていた。



「Aは騙されてるんだよ？」


「愛莉っ！！」



探しに行かなきゃ、私が。音を、天馬を。


「そうやって怒って愛莉の名前呼べばいいの！！江戸川音と、３人で仲良しごっこ？違うんだよ！！話してても上の空で、どこか無視されるように感じるより…そっちの方がずっとマシ」


「愛莉…っ、」


「愛莉を恨んで？もっともっと愛莉でいっぱいにしてよ！！」


狂気、じみてる……、


こんなの、おかしい…


こうしたのは…私なの？


「もういいわよ…愛莉。あなたも、最低ね…、」

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