花の令嬢は平穏に生きたいのです。＃４

episode１３ ページ13

「音！」


「A！おはよう！」


「ごきげんよう、音。早かったのね」


「…ううん、別に…うん、別に…」


「………………どこ見てるのよ」


音の微妙な返事が気になって顔を見てみれば、一点を見つめて動かなくて。

目線をたどれば、私の顔の下。


「ほんと、羨ましいなぁって」


人前でなんてことを言っているのか、分かってる？


「いいもんじゃないわよ。私だって、許されるなら音みたいな格好してみたいわよ。…まぁ、似合わないからあれなんだけど。」


私が着ているのは黒のシースルー生地でできたオフショルダーワンピース。

あわせる小物も小さめばかりだからたしかに胸は強調されてると言われればそうなんだけど。

私だって、音みたいにオーバーオールとか着てみたいし、リュックも背負ってみたい。あ、スニーカーも履いてみたい。


「お待たせ〜」


「愛莉。遅いじゃない…って、」



愛莉の後ろから出てきたのは晴。


晴の方は分かってたのかなんだか焦る様子もなかった。逆に音は慌てまくっていた。


「神楽木?!なんでここに?!」


「暇してたから連れてきちゃった」


暇…してた？


「暇って…愛莉、晴は大概いつも暇じゃない」


晴は大概毎日暇人だ。むしろそうじゃない時の方が珍しい。

「はぁ？なんだそれ！たまたま今日が空いてて！」


…面倒くさい


「…そうね、そうみたい。ごめんなさいね、愛莉、音、行きましょ」


そう言って２人の手を引いてすたすた歩き出した。

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