重岡大毅 ＊ SCARS 2

21. バラードナンバー ページ21

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前の曲が終わったあと



ついに待ち焦がれた彼が正面に立った






照明が落ち、次の曲が始まると



何十回と聴いて慣れた前奏に



思わず鳥肌がたつ






＿＿＿＿いつだったか



私がこの曲を好きだと



中間さんに伝えたことがあったのだろうか







数ヶ月ぶりに間近で見る彼が



歌う姿を初めて見る瞬間、



流れてきた曲は '' きみへのメロディー ''








このアルバムの中で



私が1番好きな曲だった








これは罪でしょう、中間さん









……ああ。きっと。





中間さんは最初から私を呼んでくれたんだ








この曲で切なそうな顔をして歌う彼を



見せてくれようとしていたのかもしれない








たぶん、明るい曲が多いから



しっとりしたバラードナンバーは



最初で最後だと思う








唯一のバラード曲で目の前にいるのは



きっと、中間さんの計らいだ








そう理解した瞬間、



彼らの優しさにまた暖かい気持ちになり



涙で重岡さんが歪んだ








目の前の彼はまだ私には気付かないし



やっと会えたのに



私の視界も涙で滲んでいる








それでもやっぱり



ぜったい、ぜったい忘れないように



彼の全てで表現される '' 想い '' を



少しも残らず記憶したい








掌で溢れる涙をぬぐって



会いたくてたまらなかった重岡さんを



しっかりと見つめた








どうか、この曲が終わるまで



泣かずに聴くことができますように








胸に手を当てた瞬間



彼と私を繋ぐ



私の手首にかかったブレスレットが



曲に合わせたスポットライトに照らされ



光ったような気がした








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