軽い嘘 ページ10
危惧していたことが予想外の人物によって引き起こされた
ご近所さんより早くもっと厄介な人に見つかってしまった
なんて返すのが正解?いや、どんなことを言っても不正解にしかならないこの状況では黙っている方がまだ正解に近いかもしれない
童顔には似合わない何かを見据えた険しい表情が更に緊張感を増幅させる
沖「だんまりですか
ならもっと正確に言いやしょうか?
"誰から" の頂き物でしょうねェ」
歳の割に隊長クラスまで上り詰めていることも頷ける程の勘の鋭さに感服する
まるで昨夜を見ていたかのように事の詳細を推察しているであろう沖田さん
これまで小太郎さんのお陰で逃げきれていたため、少し侮っていたがやはりこの少年を舐めてはいけない
それと同時に小太郎さんの逃げの技術に改めて感謝をする必要がある
赤褐色の瞳が微動だにせずに私を捉え離さない
全部話した方が楽になる、そんな警察特有の言葉が聞こえてきそうなくらいだ
「主人の物、古くなってたので新調したんです」
沖「へェ、桂にしちゃ随分と派手な柄だ」
「雰囲気が変われば新選組の目も巻けるでしょう?」
軽い嘘がスラスラと口から出てくる自分に驚いた
もし今ここで下手を踏んで小太郎さんに迷惑をかける訳にはいかない、その思いと
高杉さんと私に繋がりがあることを誰にも知られたくない、という少しの嫉妬にも似た思いが
普段の私なら言わないことを言わせていた
沖田さんはまた何かを見据えた様子だったが、今度は険しい表情ではなくニヤリと口の端を上げ不敵な笑みを作り
沖「それじゃあ桂の野郎に伝えておいてくだせェ
テロリストがテロリストの仮装とは随分と粋な計らいだ、と
じゃ、俺はサボりの途中なんでこれで失礼しやす」
それだけ言い残してスタスタと軽い足取りで私の前から消えて行った
私は安堵するどころか心臓は先程よりも遥かに激しさを増し、血の気が引く
沖田さんの言葉で咄嗟に思い返されるのはあの人が最初に私に言った名
『…天下の大罪人、とでも言っておこう』
私は下手を踏んでいた
高杉さんも攘夷志士なんだ、とはたと気づく
お天道様から逃れるために入ったのに、いつの間にか日に追い詰められていた
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時