悪戯 ページ43
「桜月お帰りなさい」
小太郎さんが朝に出掛けて1人になった頃、桜月が長い外出から帰ってきた
抱き上げるとやっぱりあの人の香りがする
嗅覚の他に視覚的にも桜月の変化に気づく
首輪の色が違う…
これってもしかして、高杉さんがやったの？
だとしたら何のために？
——私をあの場所に呼ぶため
ある1つの浮ついてしまう答えに辿り着く
そんなわけないと考え直すけど、銀さんに言ったあの言葉
"そいつは俺のモンだ"
お花畑な脳内で反復される高杉さんの少し殺気の混じった艶やかな声
ぶわっと急上昇する体温に頭がクラクラとして、桜月を抱えたままその場にヘタリと座り込む
あの時は緊迫しすぎて2人の会話の内容をまともに理解できてなかったけど、今考えると相当に凄いことを言っていた
あんなのほとんど告白に近い
あの時、高杉さんが想いを伝えてくれていることに気づいていれば…
そんな、たらればが次々と出てくる
気づいていたら銀さんの言葉を無視して高杉さんの元へ行っていた？
いいや、行かなかっただろう
行っていたら桜月には出逢えなかったし、高杉さんのこんな悪戯もなかった
小太郎さんにバレたらまずいことになるのは分かってるけど、高杉さんの嫉妬混じりの悪戯が今は愛おしくて仕方ない
小太郎さんへの言い訳はまた後で考えるとして、今は高杉さんのところへ行く言い訳を考える方が先決だ
困っているのに高杉さんに数ヶ月ぶりに会えるかもしれないと思うと嬉しくて嬉しくて疼く身体を鎮める方法を私は知らなかった
結局私と高杉さんという点と点は誰がどうしようとも、歪な線となって交わってしまう
これを運命と言わずして何と表現すればいいのだろうか
何度でも高杉さんに恋わされて愛で汚れてやろう
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作者名：るう | 作成日時：2022年9月20日 18時
