満月の夜、桜の下で【高杉晋助】 (ページ40)

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迷子札ページ40

黒猫を飼うことになってからすぐに首輪やご飯などを一式買い揃え、今度は名前を決めるのに大人2人が真剣に頭を悩ませている

黒猫は雄だったので男の子っぽい名前を色々と候補で出してみたけど、どれもしっくりこなくて、かれこれ30分が経っている

当の本人はふかふかの寝床で気持ちよさそうにお昼寝中だ

時折寝返りを打てば首輪に付いた鈴がチリリと鳴って、それがまた愛らしい

「名前を決めるのって難しいですね」

桂「そうだな

　何か入れたい文字はあるか？」

「… "桜" か "月" をいれたいです」

桂「ならばこれはどうだ？」

何かを思いついたように紙にサラサラと筆で文字を書いていく

この黒猫についた名前は

桂「桜月(さつき)というのはどうだ？」

「桜月…うん、とても良いです」

桂「ではこれで決まりだな

　迷子札も付けておこう、桜月は自由行動が多いからな」

私より小太郎さんの方がウキウキしてるのが目に見えていて何だか可愛らしい

寝ている桜月の首輪に名前と住所を記入した迷子札をそっと付けてやれば家の子になったと実感する

小太郎さんがそっと桜月を撫でると目を覚まして、ひらりとどこかへと出掛けたいって

そんな姿を見て高杉さんみたいだなんて思ってしまう

…高杉さんは私が飼うというより、私が高杉さんに飼い慣らされて迷子札つけられる方が正しいかもしれないな

いや、迷子札なんていらない

だって私が猫だったら高杉さんの傍から離れるなんてしないもの

桂「早速外出か」

「帰って来ますかね？」

桂「帰ってくるさ

　桜月はAのことが好きだからな」

「そうだといいんですが」

桂「まあいざとなったら銀時たちに探してもらおう」

桜月と言う度にパッと頭に浮かんでくる男が1人いる

忘れようとすればする程、自ら関連することばかりをしてしまう

だって黒猫につけた名前の、桜と月は私の中でたった1人の男を表す特別な文字——