大罪人 ページ4
満月を目指して真っ直ぐに歩き続けたら人気のないところに入り込んでいて、辺りを見渡せば町の景色を見下ろせる少し小高い丘に行きついていたみたいだ
さっき見た月がより大きく見えて思わず息を吞めば、澄んだ空気が器官を滑って気分も頭もスッキリする
ここには大きな桜の木もあるようで、桜が月の光に照らされて、それはそれは見事なものだ
その見事な月と桜に魅せられた私以外の客人もいるようだ
その人は、男と言うには美しい横顔で、女と言うには細身だがしっかりとした体つきをしている
片膝を上げて煙管を右手に持ち、時折口に付けては煙を吹かしている
ドキンと大きく胸が鳴れば、その姿が目から離せなくて見惚れてしまう
話しかけようにも話しかけられない、その美しさに声がでないんだ
?「今日はまた随分とでけぇ月が出てる
かぐや姫でも降りてきそうな夜だと思ったら
とんだじゃじゃ馬姫がおりてきたもんだ」
私ではなく夜空を見上げながら酔狂なことを言う男
普通の私をじゃじゃ馬と例えられたのは生まれて初めてで、何だか嬉しい
「あの、貴方は…」
?「…天下の大罪人、とでも言っておこう」
私に向けられる不敵にニッと笑ったその男は左目は包帯がしてあり、紫がかった髪はその左目を隠すように流している
紫の着物には金色の蝶がひらひらと舞い、胸元は随分とはだけ、肌寒さをしのぐためか黒地に金の文様を施した羽織
それがまた大罪人さんの妖艶さを増している気がしてならない
小太郎さんと同じ歳くらいだろうが、彼とはまた違う魅力が漏れ出していて、きっとこの人の元にも多くの人が集うのだろう
大罪人さんは立ち上がり私とは反対方向に歩き出し帰るようだった
「あの…少しお話しませんか…?」
?「俺ァ見ず知らずのあんたと話すことなんざねぇ」
勇気を振り絞った言葉はあっけなくかわされれる
いつもなら大人しく引き下がるところだが、そうさせなかったのはきっとこの男のせい
「私とお友達になってくださいっ」
?「…」
男は私に背を向けたままぴたりと足を止める
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時