腕 ページ30
「なぁ、どうなの」と見たことのない男の顔をした銀さんが私との距離をじりじりと詰め、銀さんの甘い香りでいっぱいになる
いつもはこんな目も顔もしない銀さんに圧倒されてしまい、身体が固まってしまう
銀「A…」
ドキンと胸が鳴るのは、名前を呼ばれたとき、一瞬だけ銀さんが高杉さんと重なって見えたから
その一瞬だけ気を緩ませてしまった隙を銀さんが見逃すわけもなく、気づけば私は銀さんの腕の中にいた
一気に上がる心拍数とは裏腹に、誰かに見られたらという恐怖で体温は下がっていく
「ダメです銀さん」と蚊の鳴くような声をあげるが銀さんの耳には届かず、寧ろ力が強くなった
?「そいつを離せ銀時、その腕 切り落とされたくなかったらな」
銀「ッ何でお前ェがここにいんだ、高杉」
高「そりゃこっちの台詞だ」
勝手口に背を凭れて平然とした目をして高杉さんは此方を見ているが、声や雰囲気に殺気が混じっていた
それは銀さんも同じで、高杉さんの姿を見るとすぐに私を開放して、自分の背後に私を隠すように高杉さんに喰って掛かる
たったこれだけでこの2人は相当仲が悪いことだけは瞬時に察知できた
困っているときに高杉さんが煌々と輝る満月を背後に登場したことで、彼がいつにも増してかっこよく見えて、相当ピリついた状況に反して1人だけ頬が緩んでしまう
銀「ズラの嫁、人質にでも取るつもりだったか」
高「さぁな、そいつをどうしようと俺の自由だ」
銀「それとも此奴と不倫でもしてんのか」
高「そいつはお前のことだろ?銀時」
言葉の端々に棘があり、聞いているだけの私がダメージをくらう
高杉さんがいつか言っていた、"友達なんて柔なモンじゃねぇ" その言葉には嘘はなかったようで、触れてはいけない箱を開けてしまった気分だ
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時