無意識 ページ26
- 高杉side -
3度目の満月の晩に此奴に俺のモンになれと言えば、顔を赤らめて俺の手を握られ堪らず口付を落とした
それから毎月ここに来ては此奴とくだらん会話をしたり、口付をしたくなったらする、そんな関係になっていた
何度口付をしようとも此奴は慣れない様子で毎回俺を煽るような甘い声を漏らしていて我慢をするのが徐々にきつくなってきている
今だっていつものようにキスをしてやれば、甘ったるい声と、とろんとした瞳をして此方を見てくる
この女は無意識でこれをやってのける
この間も煙管の煙を吹きかけてやればどう勘違いしたのか旦那と上司のことを思い出してやがって、餓鬼の様にむかっ腹を立ててしまった
…ズラにもこんな顔や声を見せてんのか
そう思うとやはりイライラとしてまた俺は此奴の唇を奪ってやる
高「そういやお前 甘ぇモン好きか?」
「え、何で知ってるんですか」
高「この間見かけたもんでな」
江戸に仕事で来た時、団子屋で買い物をするこの此奴を見かけた
俺には見せたことのないふんわりとした笑顔を店の爺さんと娘に見せていて、俺にも見せてほしいと思って覚えていただけ
高「ズラは甘味は食わねぇだろ」
「そうですけど…ってやっぱり小太郎さんとお友達なんですか?」
高「…友達なんて柔なモンじゃねぇんだよ」
友達という言葉に苛ついて何の悪気もないAを睨み付けてしまった
殺気立っているのが自分でも分かるくらいに俺はまだあの時のことを、この腐った世界を許しちゃいねぇ
「高杉さん」
高「あ?」
「怖い顔もお綺麗です…」
怯えてるモンかと思えば此奴は俺を綺麗だと素っ頓狂なことをほざきやがる
ここまで分かりやすく俺に落ちていて、阿保な発言をする女は初めて見た
そんな女が愛おしくて仕方ない俺はもっと阿保なようだ
こんなに阿保になれるのもこの女の隣にいる時だけだと思いながら、スルリと結わえてあるAの髪留めを取り、此奴の綺麗な黒髪に反射する月にそっと口付を落とす
――踊るならば阿保より底なしの阿保と踊る方が余程楽しいだろう
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時