普通 ページ3
桂「A、今夜は冷えるらしい
暖かくして眠るのだぞ」
「小太郎さんは相変わらず優しいですね」
桂「Aだからだ。他の者にはそうはせん」
こちらが私の旦那さんの桂小太郎さん
穏健派の攘夷志士でカリスマ性を持つリーダー格に多くの人がこの人の元に集う
質素倹約、質実剛健がよく似合う少し堅物だけど、表情を崩さないで冗談を言ったりすることもあってそのギャップが私に刺さる
つやつやの長髪は女の私も羨んでしまう
私だから、と言うけど仲間思いで世話焼きだってことを知ってるし、そういうところが大好きだ
床に就く前のさりげない配慮が身に染みて嬉しい
押し入れから少し厚みのある掛け布団を出してくれたり、お風呂で温まった身体を冷やさせないように家の戸締りまでしてくれる
かく言う私の方は本当に何のとりえもなくて、容姿も格別に綺麗ってわけじゃなくて普通という言葉がよく似合う
性格だって優しいとは言われるけど反抗的な態度を表に出さない、ただそれだけの普通の性格
小太郎さんはそういう普通の私を気に入ってくれたらしい
昼間は家事をこなし、夜は小太郎さんとお話をして寝るまでを過ごす
見て分かるように買い物以外は一日中家に閉じこもっているんだ
それでも人は日常に少しのスパイスとして特異な経験がある方がメリハリがついて生きた心地がするもので
小太郎さんは結婚をしてから夜間に攘夷活動をする、というか夜に外出をすることも減り新選組の追っ手も夜はパタリとなくなった
まだ新選組が来てくれた方がバタバタとして賑やかだった
小太郎さんと一緒だったら絶対に逃げ切れる、そういう保障があるから夜の逃走劇が楽しくて仕方なかった
夜に出かける用事もなくなれば、小太郎さんにも夜間は危険だから外出はしないようにと言われている
それがなくなった今、普通の私が人生に波を立てることもなく平凡に過ごせている現状に対して少し不満を持っている
"何か生活に変化がほしい"
こんな贅沢でちっぽけな欲求が私を突き動かした
「小太郎さん、ごめんなさい」
少し肌寒く心地良い夜風を切りながら小太郎さんへ届かない謝罪をしておく
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時