初体験 ページ20
「いった…」
男とぶつかった拍子に足首は捻るし、パンプスのヒールも折れてしまった
私が避けられなかったからこんなことに…
「あの、すみませんでした」
いつもの癖で足首を抑えながら男に謝罪の言葉をかける
?「すまない、追われている故、とりあえず一緒に来てもらうぞ」
「え?…わっ!!」
男にグッと腕を引かれればつい数秒前まで顔を上げなければ見れなかった男が目の前にいて、その端正な顔立ちに思わずドキリと胸が打たれた
見惚れていると今度は私の身体が宙に浮かび、背中と膝裏に鍛えられた腕があり、男の顔がまた上に見えた
私は今人生で初めてお姫様抱っこというものを体験している
不摂生を極めている私の体重は言うまでもなく重いのにも関わらず涼しい顔をしてペースも落とさずに走り続けている
こんな状況にドキドキしない女はいない
しかし、例外とはどこにでもいるもので
目まぐるしく変わる目の前の風景に頭が情報処理をしきれずにパンクしそうだけど、パンクしてる場合ではない
私には出張という超重要任務がある
だからこんなあり得ない状況なのに、約束の時間に間に合わないというドキドキの方が勝ってしまうのが社畜の性
「ちょっと…!おろしてください!」
?「急いでいるのだ、すまんがもう少々辛抱してくれ
そして俺は、あれでも、ちょっと、でもない
桂だ、桂小太郎」
「こんな状況でよく名乗れますね?!
無理です!仕事があるんです」
?「それならば送って行こう
エリザベス」
エリザベスと呼ばれた白い生物は急ブレーキをかけて方向転換をしたと思えば、黄色いくちばしの中からニュッとバズーカ的な何かを新選組にむけて撃ち放った
後方からものすごい爆発音に合わせて、新選組らしき男たちの叫び声が聞こえたかと思えば、
私を抱きながら走る男は「馬鹿め」と "してやったり" と言わんばかりに口の両端を上げて笑った
その顔が私にはとても清々しくて綺麗に見え、この男に出会ってから数回目の胸をドキンと打つ音が鳴った気がした
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時